平岩智子さんのバティック画が日展に入選 残照のプランバナン寺院を描く

平岩智子さんのバティック画が日展に入選 残照のプランバナン寺院を描く

東京在住のバティック作家、平岩智子さんの「残照の帰り路」が第118回日展に入選した。日展は11月23日まで東京・六本木の国立新美術館で開催されており、平岩さんの入選作を見ることができる。(写真はすべて平岩さん提供)

平岩智子さん作「残照の帰り路」
平岩智子さん作「残照の帰り路」

 平岩さんの日展入選は今回が4回目。先の入選作はどれもバリ島の風景だが、今回の舞台はジャワ島中部のプランバナン寺院。

 プランバナン寺院の特徴的な、天に上る火焔のような形状の塔が高くそびえ、その手前を牛車が行く。空は闇が来る直前の紫色に染まり、奥の塔はすでに闇に沈んでいる。前方の塔の先端や片側だけが、残照のオレンジ色に染められている。

 この風景は今から30年ほど前のこと、「1993年くらいかな?」と平岩さんは回想する。日暮れ近く、プランバナン寺院で行われるラーマーヤナ舞踊を見に行く途中で、牛車に遭遇した。今では公園のようになり立入制限されている寺院だが、当時は周辺にまで畑があった。牛車に乗っているのは農作業を終え、家路に向かう人たちだ。

 この牛を描くのが難しく、だいぶ苦労したそうだ。「アウトラインを入れて、なんとか強さを出そうとしました」と平岩さん。ちなみに平岩さんの実家は酪農家とのこと。

牛を描くのに苦労した

 平岩さんがプランバナン寺院に着いた時にはもう日は暮れていたが、残照の風景を想像で創作した。「プランバナンの塔の上部は炎のような有機的な形なので、夕日に照らされて燃えるような色で表現するのが似合うように思いました」。その表現がまた難しかったと言う。

残照でオレンジ色に染まるプランバナン寺院

 「それから、牛車に積んでいる草は何だろう、と、今になって調べてみると、根っこのような部分が多かったので、茜かもしれないと思いました」。バティックの染料にもなっている茜、という偶然だったとしたら、すてきだ。

牛車の荷

■第118回 日本美術展覧会(日展)
10月31日(金)~11月23日(日・祝)10:00〜18:00(入場は17:30まで)、火曜休館、国立新美術館。入場料1400円(日展のホームページから200円のクーポン券をプリントアウトするか、スマホに表示して見せると1200円)。トワイライトチケット(午後4時以降の時間限定入場券)600円。大学生以下無料。

平岩智子さんと日展入選作品「残照の帰り路」
平岩さんと「残照の帰り路」

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