日光の眠猫に会いに行く

日光の眠猫に会いに行く

うちに来た2匹目のねこは、「日光の眠猫(ねむりねこ)に似ている」ということから「甚五郎」と名付けられた。「いつか本物の眠猫を見に行きたいなぁ。そして甚五郎グッズ(すなわち眠猫グッズ)を買いたいなぁ」と思っていた。それが実現した日光旅行。

甚五郎
ジャカルタの道端で拾われた甚五郎。5歳になりました

 子供のころ、「講談 左甚五郎」という本が大好きだった。ほぼフィクションだろうがめちゃくちゃ面白く、細部はうろ覚えながら、印象は今でも鮮烈だ。

 左甚五郎は普段は仕事をせず、酒を飲んでゴロゴロしているだけ。金に困った時など、いざ仕事をするとなると、大好きな酒を断つ。そして彫り上げた作品は、ノミ痕が荒々しすぎて「一体何なのか?」さえ、よくわからない。それは左甚五郎が、置かれる場所まで計算して彫っているからだ。目を入れて、指定された場所に置くと、まるで生きているように変わる。

 木彫りの水仙は水差しに活けると、まるで水を吸い上げている本物の花のように見え、通りがかった人が大金を払って買って行った。眠猫は「ねこだか何だか?」という代物だったが、左甚五郎に「それは、上で飾るのだろう。その場所へ上げてみろ」と言われ、半信半疑でそうしてみると、まるで生きたねこのように見え、人々は驚く。

 「左甚五郎の眠猫」というと、このイメージが強すぎて、中学校の修学旅行でだったか、実際に見た時には、「別にノミ痕が荒々しくもない、丁寧に彫られた普通のねこじゃんか」と、がっかりした。そして、「ほぼ何も覚えていない」というぐらいに記憶から消えている。

 うちのねこの縁で、大人になってから再び東照宮へ。拝観料1600円と長い行列に恐れをなしながら、自動券売機で券を買う。

東照宮に来た! 眠猫がいるのは奥の方
東照宮に来た! 眠猫がいるのは奥の方だ

 子供のころは「ゴテゴテしていて趣味が悪い」としか思わなかった東照宮だが、あちこちにある立体的な彫刻の技術に感心する。象、鳥、花束など、どれも素晴らしく、バティック文様とのつながりも感じ、思いがけずにほかの彫刻にも目を奪われながら、眠猫のいる場所へ。

象の彫刻
生き生きした象の彫刻
花束
かごに活けられた花束
下の、波と鳥の模様がすてき
動画のような波と鳥の模様(下)が面白い。波頭はバティック文様のメガムンドゥン(雨雲)のよう

 眠猫、いた! かわいい!! 甚五郎そっくり!!! 同じような場所に取り付けられているほかの彫刻に比べて「ねこ」というのが斬新だし、なんといってもかわいく、ねこの柄も表情もポーズもとてもリアルだ。

眠猫は門の上
眠猫は門の上
日光の眠猫

 修学旅行生に便乗してガイドの説明を聞く。「東照宮の数ある彫刻の中で『左甚五郎作』と伝えられるのは、眠猫ただ一つだけ」「ここから石段を上がると徳川家康の墓になり、『お墓の前の門番』という非常に重要な場所に置かれている。ねこだから『ネズミ一匹通さない』」「門番が寝ていていいの?という話だが、平和な世の中を示す。また、眠っているように見えて、左側から見ると、前足をそろえて何かあったら飛びかかれる体勢になっていて、トリックアート的」。

 大きさは「手のひらサイズ」とのことだ。小さくて見落としてしまう人も多いようで、その場にはデカデカと「頭上 眠猫」と書かれている。階段を上がった所にも「眠猫は200段下です 眠猫は通過してます 入口のゲートにいます」と注意書きがある。気付かずに階段を上がってから「眠猫はどこだ?」と探す人もいるのだろう。

 笑っているような目と口元が甚五郎にそっくりだ。前足をそろえたこのポーズ、甚五郎もよくやる。いろんな角度から、本物の眠猫を堪能する。

眠猫

 一緒に行った友達は「これは左甚五郎が飼っていたねこだろう。依頼を受けて、『自分のねこを有名にしてやろう』と彫ったに違いない。左甚五郎が当時の一番の名工だから、誰も文句を言えない。甚五郎は『嫌なら別に(買ってくれなくて)いいですよ』という感じだったのだろう」と自説を展開する。うーん、意外にこれが正しいのかもしれないな。

 「ネズミ一匹通さない」とか「平和な世の中」とは、後世で付け加えられた説で、左甚五郎はただ単に自分のねこを自慢したかったのかもしれない。その思惑通りだったのか、「眠猫」は超有名なねことして後世に残っている。

 さて、もう一つの重要なミッションが「甚五郎(眠猫)グッズ」探しだ。門番の眠猫をくぐって石段を上がると、上がり切った所に、眠猫の絵馬やお守り、おみくじが売られている。東照宮のほかの場所では売られていないので、眠猫関係の物が欲しかったらここまで来るしかない。

眠猫グッズいろいろ
眠猫のお守り、絵馬、土鈴など
眠猫のおみくじ
眠猫のおみくじ

 東照宮の前の道に並ぶ土産店では、眠猫グッズはあまり見付けられなかった。あっても、マンガチックに「かわいく」アレンジされた物が多い。いや、オリジナルの「左甚五郎の眠猫」がかわいいのだ。

「日光猫サブレ」もあった
「日光猫サブレ」
靴下がかわいい
右の靴下はちょっとかわいい

お土産の「甚五郎グッズ」

No.1 眠猫絵馬

 最もオリジナルに近い眠猫の絵で、背景の花も描かれている。絵馬だが、その場で願いごとを書くのではなく、持ち帰り用。「皆様のご家庭の魔除けとして神棚・玄関等におまつりください」と書かれている。(1000円)

ジャカルタの友人にプレゼント。ドアに付けてくれた
ジャカルタの友人にプレゼント。ドアに付けてくれた

No.2 日光甚五郎煎餅(缶入り)

 ばーんと「日光甚五郎」と書かれているのがポイントだ。明治40年創業のせんべい屋で「塩バター風味のおせんべい」と書いてあるので、きっとおいしいに違いない。芭蕉の句が書かれた缶もおしゃれだ。(870円)

日光甚五郎煎餅
日光甚五郎煎餅。「左」とねこマークもポイント

No.3 日光甚五郎煎餅(箱入り)

 「No.2」より一般向けのお土産。ねこフォーカスで、箱の各面に日光の名所(東照宮、華厳の滝など)+ねこ。値段も手頃。(350円)

日光甚五郎煎餅

No.4 日光ラスク

 眠猫を含めた日光の観光名所がカラフルでかわいいイラストと文章で描かれている。「日光へ行って来ました」とわかりやすいお土産。(760円)

日光甚五郎煎餅(左)と日光ラスク
「No.3」日光甚五郎煎餅(箱入り)と「No.4」日光ラスク

No.5 栃木限定 和柄ジャガードハンカチ

 かわいい眠猫、猿、栃木名産のイチゴが描かれていて、とても手触りの良いハンカチ。実用品。(770円)

栃木限定 和柄ジャガードハンカチ

No.6 日光手ぬぐい

 上から男体山と中禅寺湖、華厳の滝といろは坂、東照宮、三猿、眠猫と、日光の思い出が一枚になっている。中でも眠猫が目立っていて、かわいい。(1580円)

日光手ぬぐい

※値段は2025年10月現在

紅葉
10月の日光は紅葉が始まっていた
日光・戦場ヶ原
日光・戦場ヶ原

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