ジャカルタ在留邦人の間にその名を知られた「ベティーさん」、本名はベティー・ダルマワン(Betty Darmawan)さん。「ベティーさんオーダー会」でも触れたように、1982〜84年の2年半、夫の駐在で日本に滞在。日本語学校へ通って日本語を学び、その後、東京・目黒の洋裁学校「ドレメ」で洋裁を勉強した。
インドネシアへ戻ってからは、以前の仕事を続けていたが、日系企業で働く夫の同僚(日本人の駐在員)から「日本人と付き合った方がいいよ。でないと日本語を忘れちゃうよ」と言われた。
「付き合うって、どうやったらいいですか?」
「洋裁はどう?」
そんなやり取りをきっかけに、1988年から日本人の仕立てのオーダーをぽつぽつと受けるようになった。本格的に始めるようになったのは1995年。ある日系商社の社長に呼ばれ、週1回といったペースで社員らからの仕立てのオーダーを受けるようになった。そこから口コミで評判が広がっていった。
「英語はそんなにできない」そうで、仕立てを始めたいきさつも「日本人と話したい」だったため、顧客は日本人がほとんどだ。
なにしろ30年余りもずっと続けているので、顧客の中には「2回目のインドネシア駐在に来たよ」「3回目の駐在に来たよ」と言って再会する人もいたり、小さかった子供が大きくなっていく姿を見たり。ジャカルタ在留中にベティーさんのお世話にならなかった日本人は少ないのではないか。ベティーさんによると顧客数は1000人を超え、仕立てた服は「数え切れない」とのこと。
人気の理由は、「ファスナー」「芯」「ゴム」「ひらひら」「ゆったりめ」といった単語まで日本語で言え、日本語でオーダーできること。日本人の好みをわかっていて、いろいろアイデアを出したり工夫を凝らしてくれること。仮縫いまでしてくれる丁寧な仕事ぶり。朗らかで明るい人柄。
縫い子さんはいるが、デザイン、型紙、裁断、最終チェックは今でもベティーさん自身がやる。
仕立てであまりやっている人のいない「仮縫い」は、ベティーさんによると「一番、大事」。オーダーの時に採寸はするものの、その人の好みはわからない。「ぴったりがいい」「ゆったりめがいい」とは言っても、どこまでの「ぴったり」または「ゆったり」なのか。それを仮縫いの時に調整し、その人の体と好みにぴたっと合うように仕立てる。それがオーダーメードの醍醐味だ。
仕立てを頼まれるのはバティックが多いと言う。バティックの場合、1枚の布の大きさは決まっている上、大体は一点物なので、使える布は限られる。「ワンピースに足りないから、もうあと1メートル、追加して」というわけにはいかない。柄の入り方も独特だ。
バティックの仕立てで一番難しい点は?
「柄合わせですね。ファスナー部分など、柄が合わないとおかしい。斜めの柄だと、合わせようとすると、一枚ではワンピースに足りないこともあります。そのほかにも、どこの部分をどう使うのが一番いいかを考えます。それに時間がかかる」
インドネシア人にとって「バティックの服」というと、「安物のバティック柄プリントで作った寝間着」のイメージが強いと言う。最近になってようやく、外出用の服も仕立てるようになってきたそうだ。外国人がバティックの服を着ているのはインドネシア人の目から見て「うれしいです。『あ、あのバティック、いいな』と思いますし、感謝します」。
ただし、「バティックは派手な柄が多いです。2〜3年、インドネシアに住んでいると、それも大丈夫になってくるのですが、気を付けて(笑)」。ちなみにベティーさん自身は、黒地に柄の入ったバティックが「エレガント」で好き、とのこと。
あれこれ工夫して服が出来上がった時は、「とてもうれしい」そうだ。
ベティーさん
WA:0816-1812-327
- 訪問はジャカルタ内
- 月〜金12:00ごろ〜16:00ごろ
- 最低3〜4人または4着のオーダー
- 大体何でも可。ただし、ジャケットなど芯のある服を除く
- オーダーから仮縫いまで3週間ぐらい、仮縫いから仕上がりまで1週間〜10日ぐらい
- 仕立代はワンピース65万ルピア、スカートまたはズボン55万ルピア。出来上がりの時に全額を支払い(前金不要)