天皇皇后両陛下の接見、どのバティックを着る?! コロナか象か

天皇皇后両陛下の接見、どのバティックを着る?! コロナか象か

 国賓としてインドネシアを公式訪問されている天皇皇后両陛下の日程に「在留邦人代表と接見」というものがあり、そのうちの一人に選ばれた。

 さて、一体何を着よう? 当然、バティックだが、一体、どのバティックにする? 私の場合、チレボンかインドラマユの手描きバティックに絞られるが、フォーマル感から言うと、チレボンの高級手描きバティックになるだろう。いわゆる「良いバティック」なら、20枚ほど持っているのだが、どれにするか迷いに迷う。

 まずは、チレボンで買って来たばかりの、カトゥラさんの「コロナ・バティック」を着てみた。ヘム(シャツ生地)なのだが、竹田有希さんの「スカートにしても良いかも」という言葉をヒントに、試しに腰に巻いてみた。意外に、おかしくない。

 メインとなる柄は、本来なら縦向きでシャツの後ろ身頃として使うのだが、腰に巻くと、横向きになる。しかし、縦向きのメガムンドゥン(雨雲柄)を横で巻いたりもするし、まぁ、「あり」ではないか。

 襟や袖用に染め抜いた模様の一部は、ちょうどウエスト・ラインに来るので、これはトップスで隠せそうだ。雲一列は横に来てしまうのだが、「横に入った縦ライン」として、あまり目立たずにできそう。

手前がウエスト・ラインに来る
手前の部分はちょうどウエスト・ラインに来て、上の服で隠せる
ヘム(シャツ生地)はこのようになっている(カトゥラ工房提供)
ヘム(シャツ生地)の全容。私が買った2枚とは色違い。奥から巻いていって、手前の部分を前面に出す計画(写真はカトゥラ工房提供)

 「ヘムを腰に巻く」というのは、インドネシア人から見るとめちゃくちゃおかしいので、ヘムだとはバレないようにしないといけない。しかし、ヘムを腰に巻くからこその「普通でない」模様の出方が、コロナ柄の不思議さと相まって、個性的な装いになるように思われる。花柄、鳥柄、ザクロ柄などの、美しくて素晴らしい伝統柄バティックを巻いた時の「バティックバティック」した印象を与えない。そして、カトゥラさんの「コロナと戦う龍」の絵が、やはり、めちゃくちゃ格好いい。身に着けた時のインパクトの強さが違う。

 個人的には、賀集由美子さんのバティックを身に着けたかった。しかし、賀集さんのバティック布(腰に巻く用の、カインパンジャンやサルン)は数があまりなく、使えそうなのは、賀集さんの染め直してくれた「夜の象」ぐらい。染め直しではあっても、賀集さんらしさが非常によく出ているバティックだ。

 試しに巻いてみると、ぱっと華やかで、顔写りも良い。しかし、イラストチックな象がカジュアルに見えてしまう。また、象というと、タイの印象の方が強いだろうか?

賀集さんが染め直してくれた象柄バティック
賀集さんが染め直してくれた象柄バティック。ピーナッツやねこは、賀集さんの遊び

 「やはりカトゥラさんのコロナでいこう」と決めたものの、天皇陛下のインドネシア訪問前の記者会見動画を見て、また迷い始めた。天皇陛下は、日本とインドネシアの間で「長きにわたってさまざまな交流が積み重ねられてきました」と述べ、その中で「象」に触れられたのだ。

15世紀初頭には、スマトラ島のパレンバンから出航したと思われる船が、室町幕府の将軍への贈り物として、生きた象やクジャク、オウムなどを乗せて、現在の福井県の小浜市へやって来たことが資料に載っています。日本人が本物の象を見たのはこの時が初めて、と言われています。

天皇陛下(インドネシア訪問に当たっての記者会見)

 日イ交流の一幕として天皇陛下の触れられた「象」を、日イ交流の象徴として身に着けた方が、メッセージとしてわかりやすく、話の糸口としても良いだろうか? しかし、賀集さんのバティックだとフォーマル感に欠けるように見える。

 象柄で言うと、もう一枚、「メガムンドゥンと象」のバティックが手元にあった。チレボンのアリさんの工房作、「バン・ビル」(赤青)と呼ばれる伝統色だ。真紅の背景に、青色のグラデーションの雲が立体感をもって浮き上がり、雲の間で赤や黄色の象が遊ぶ。これは、どこへ着て行っても恥ずかしくない、見るからに「手描き・高級・良いバティック」という品だ。もちろん、腰に巻いてもしっくり来る。しかし、色も柄もあまりにも強すぎて、派手すぎるだろうか?

メガムンドゥンと象(アリリ工房作)
柄も色も「これぞチレボン」というバティック。象がいるのは珍しい

 どうにも決めかねて、いつもは眺めて愛でているだけの高級バティックを、次々に巻いてみる。身に着けるとまた、見え方が違う。

 これは地味すぎる。これは素晴らしいけど、まぁ普通。これは柄の意味がふさわしくないかも? 

 服と同じで、バティックを着る時もTPOに合わせて、いろいろ必要になってきたり、いろいろ欲しくなってくるわけだ、と思いつつ、鏡の前で「一人ファッションショー」を繰り広げながら、迷い続けた。

 結局、最後の判断で、カトゥラさんの「コロナと戦う龍」に決めた。紺と茶色の2枚があり、紺色だと全体的にモノトーンすぎるので、少し華やかな茶色の方にした。

ずっとしまわれていたらしく、埃っぽかったので、まずは水洗い
工房の店でずっとしまわれていたらしく、埃っぽかったので、まずは水洗い

 「コロナと戦う龍」にした決め手は、身に着けた時のインパクト。それでいて上品、フォーマル。「いかにもバティックです」というバティックとは違う、ちょっと変わったバティック。不思議さと個性。「コロナ柄」という、時事性と面白さ。

 チレボンを代表するメガムンドゥン文様を取り入れた現代柄であり、賀集さんの師匠であるカトゥラさんの作。賀集さん、カトゥラさん、チレボン・バティックに携わる人たちと一緒に行く、という気持ちだ。

 当日の準備を手伝ってくださった、たまさん、みきさん、ニコさん、どうもありがとうございます。

接見の会場で
接見の会場で。アクセサリーはトールンとジェンセン。バッグはニコさん提供(写真はみきさん)

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