「インドラマユ銀河鉄道」の風呂敷を作る 再びチャップ体験

「インドラマユ銀河鉄道」の風呂敷を作る 再びチャップ体験

 チャップ(型押し)バティックでオリジナル風呂敷を作ってみる体験は、「+62インドラマユ・バティック・ツアー」を始める前に、試しで1回やってみたものの、よくわからないままに適当にやった。ツアーを重ね、皆さんの素晴らしい作品を見ているうちに「リベンジ」したくなった。ツアー主催者として参加者の皆さんの気持ちを知る、という目的もあり、5月にエディさんの工房へ行って、再体験してみた(注・エディさん工房でのチャップ体験は「+62インドラマユ・バティック・ツアー」のみで、個人ではできません)。

 チャップの時間は1時間。スタートすると、急に焦り始める。急いで、壁にずらっと掛かっているチャップの中から使えそうな物を選んで、テーブルの上に並べた。

クレタ・クンチャナ、ペン子のベチャ、鶴のチャップとデザイン画
クレタ・クンチャナ、ペン子のベチャ、鶴のチャップ。その場で描いたデザイン画

 デザインは前日の夜に、つらつらと考えていた。使い方は恐らくテーブルクロスか風呂敷になる。しかし、それに沿ったデザインを考えるのは私には難しい。+62ツアーでは「用途を決めるとデザインしやすいですよ」とご案内しているのだが、「用途にはとらわれず、もう、好きなデザインを作ろう」と決めた。イメージは「インドラマユ銀河鉄道」。布の真ん中に鉄道の線路を配置して列車を走らせ、銀河鉄道から見える景色を、インドラマユ要素を加えながら作ろう。

 重要なのは線路だ。「鉄道の線路みたいなチャップはある?」とエディさんに聞いてみた。さまざまな形状の線のチャップはたくさんあるのだが、どれが一番、線路に近いだろうか? 

 「二本線」というのはなかったので、真っ直ぐな三本線が4つ、1個のチャップの中にある物を選んだ。そのまま押して、「4本のダブルレール」にしてしまおうか?とも思ったが、チャップの一部をマスキングして2回押し、「3本線 x 2」とすることにした。

「線路」の線を押すイムロンさん。写真の手前はマスキング
「線路」の線を押すイムロンさん。写真の手前はマスキングされている

 チャップ職人はイムロンさん。まずは布を対角線上に折り、定規を使って、赤いサインペンで線を引く。ぴったり、その線の上に、3本線のチャップを押していく。もう一回、赤いサインペンで線を引き、再びチャップを押していく。「銀河鉄道の線路」が出来た。

 汽車はどうするか。汽車、機関車、車といったチャップは工房にはない。あるのは王宮の儀礼馬車「クレタ・クンチャナ」(Kereta Kencana)。チレボンのクレタ・クンチャナ文様と違って、インドラマユのは、馬車を引いている動物も何だかわからないほどにデフォルメされており、傘が2本刺さっている。ユーモラスで好きな文様だ。インドラマユ銀河鉄道を引くのはこれしかないだろう。

 そのほかに「車」系として、「ベチャ(人力車)に乗るペン子」のチャップがあった。2023年に東京で開催した「ペン子ちゃんカフェ」の収益を使って作り、エディさんの工房に寄付した物だ。これをクレタ・クンチャナの後ろにつなげることにした。

 「線路の線の上に乗るように」とお願いしたら、イムロンさんは過たず、ぴったり線の上に乗るように儀礼馬車を押す。そして、馬車の後ろの傘とベチャが重ならないギリギリの位置にベチャを押す。ベチャの2つの車輪も、見事に線の上に乗っている。すごいすごい。

線路の上のクレタ・クンチャナとベチャ
線路の上のクレタ・クンチャナとベチャ

 鉄道の上は星空だ。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」では、鷺、白鳥、鶴などの鳥がたくさん出て来る。工房には鶴に似た鳥のチャップがあり、これを列車の上の空に飛ばしたい。一羽では寂しいので、二羽。

露白秋江鷗一夢
月明寒梅雁双帰

露が白く光る秋江に鷗が一眠りしている。
葉の落ちた樹を月が照らし、雁の夫婦が連れ立って帰る

蔡径詩、訳は目黒雅堂先生

 本当は列車と同じ向きにしたかったのだが、チャップの鶴の向きは逆だ。仕方がない。列車に向かっているように飛ばそう。このチャップは自分で押した。向きを確認しながら、一羽。そして、もう一羽。ちょっと角度に変化を付けたかったのだが、同じ角度に揃ってしまった。「連れだって」になっていいか。

 「銀河鉄道の夜」のススキの代わりに、インドラマユを象徴する稲穂を線路脇に押すか、と思ったが、うるさくなりそうなので、やめた。

稲穂とトンボのチャップ
稲穂とトンボのチャップ。インドラマユらしい模様
田んぼの広がるインドラマユ
田んぼの広がるインドラマユの風景

 鉄道の上には、細かい点々のチャップを星空のイメージで「背景に押したい」と伝える。すでに押してあるクレタ・クンチャナ、ベチャ、鶴2羽をマスキングしてから、全体に押すことになる。そんなに時間はかからないだろうと思ったのだが、ちょっと面倒な作業になるようで、「これは後でやっておく」と言われた。

 続いて、下半分だ。「銀河鉄道の夜」の線路脇に咲いているりんどうの花のように、何か花を押したい。何の花がいいか。迷っている時間はもうなかったので、わりに新しいチャップで、以前から「格好いいな」と思っていた蓮の花にした。連続で押していくと蓮の池のように見える。下半分のほぼ全面に押してから、蓮はちょっと「あの世」的すぎたか、と思ったり、賀集由美子さんはチレボンの蓮文様が好きだったしな、と思ったり。

 この蓮のチャップも、イムロンさんがほとんど押してくれた。自分でやってみると、模様のつなげ方が難しかった。チャップ自体は見事に模様がつながるようになっているのだが、どこに次のチャップを置いたらいいかがわからない。ちょっとためらってチャップを下ろして、線がにじんだ。

 チャップを押す時には、裏側になる模様は、押す人の側からは見えない。模様の向きや角度や位置がよくわからないままに押すのは意外な難しさだ。チャップ職人の技量の高さを感じた。結局、自分では数回しかチャップを押さなかったのだが、それでも楽しかった。自分のデザインした作品が形になるのはうれしい。

 チャップは書道と同じで「やり直し」ができない。終わってから、「列車」っぽくするにはベチャを何台も連ねた方が良かったか、とか、格好いい大きい葉っぱのチャップも使いたかったな、とか、欲やら反省点やらがいろいろ出て来る。バティックは買うだけでなく、作るのも一期一会。また挑戦してみたい。

 夜空をイメージした「黒に近い紺」で染色をお願いした。どんなバティックが出来るだろうか。

背景の「点々」はまだだが、出来上がり
背景の「点々」はまだ一部しか終わっていないが、一応、出来上がり。イムロンさんと
使わなかった、大きな葉2枚のチャップ
大きな葉2枚のチャップ。線路の上に立ててもよかったかな?

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