賀集由美子さんが「Batik Studio Pace」の名で「note」に書かれた記事の、保存と記録のための転載です。
賀集さんは「ジオシティーズ」(GeoCities)にブログ記事を書きためていましたが、2019年のサービス終了により、記事はすべて消えてしまいました。それ以前の2018年11月、賀集さんは新たにnoteを始めました。
Cirebonのバティック情報やKatura師匠とのインタビューの一部、バティックの文様についての考察などをまとめて発信(自分メモも兼ねて)したいと思い、Noteを始めてみました。手探りで使っていきたいと思います。
(2018年11月6日)
結局、記事は11本しかアップされませんでしたが、そのうちの1本が「孔雀と柘榴。生命樹文様のタペストリー」です。
noteの記事も突然消えると怖いので(「ねことバティック」も同じだとは言え)、「保険」の意味で、こちらに転載させていただきました。文は賀集さんの書かれたままです。写真はサイトからスクショしました。染色方法や制作の意図を、作り手である本人が説明している貴重な文章だと思います。多くの方に読んでいただけたらと思います。
文と写真・賀集由美子 2020年6月27日 21:23
3月の頭からコロナ禍の只中で工房にいる日が続いているので、工房や家のあちこちに散在する布を整理することにしました。まずは記録、ということで画像を取っています。小さな布が多いのですが、時々びっくりするような布が出てきます。これはそのひとつ。

サイズ:245x80cm
生地:Belacu(厚手コットンキャンバス生地)
技法:Tembok 2回プロセス(蝋落とし2回の多色) 両面イセン
色:1回目 濃紺(単色・化学染料)、2回目 黄色~赤~茶への重ね染め(天然染料併用)
下絵製作:Saptro
このバティックの原本は東京国立博物館(トーハク)の東洋館にあり、ミュージアムショップで私がたまたま購入したハンカチを見ながらサプトロさんが描いたものです。原本はこちらのリンクから。
素晴らしいバティックなので是非トーハクに足を運んで見てください。
タペストリーの下絵は目視で描いたものなので枝の流れや細かいところは異なるのですが、上下から幹が始まるところや、構成要素の孔雀や鳥、大きな花や柘榴は忠実に再現しています。サプトロさんの絵はカトゥラ師匠の絵のように整ってはいません。しかし、染め上がるとその奔放さが際立ちます。

バティックは同じ柄でも色によって印象が変わります。この配色は私が好きなもので最初に濃紺単色で染め、蝋落としをします。

黄色の花の周囲の線、これがWitというものです。Witは「細い枝」という意味で、この線がくっきりきれいに出ると2回目のプロセスで染めた色が際立ちます。濃紺の線はクリアーで強い感じになるので他のものでもよく使っています。

2回目の染色は黄色から始まります。この黄色は化学染料に天然染料をかけたものです。黄色は濃度が難しく、濃すぎると薄汚くなるし、薄いとイセンの白が目立たなくなるので難儀でした。2色目は赤、その後に紫の染料をかけて海老茶に寄せます。どの部分を伏せるか(色分け)はテンボック職人の担当です。

生命樹はいろいろなバリエーションがあって、パチェ工房のものはペンギンが木の上に乗っていたり、怪しいサルがぶら下がっていたり、妙なものが多めです。こういうバティックらしいものも作っていたんだなぁ、と。
https://note.com/batik_studiopace/n/n5b1e37993caa
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