「ねこの絵」3枚を額装した。ジャカルタの額屋さんでは、好きな額縁や台紙を選べ、その絵専用の額として、裏側も留めてしまう。入れ替えはしない。かさばる額が増えていく……というのは悩みではあるのだが、額装しないと飾れない絵はあるので、厳選して額装するようにしている。
いつも行くのは、南ジャカルタの「Nice Frame」(ナイス・フレーム)。最初のころは「無難に」、店員さんに薦められるままのチョイスで額装していたのだが、だんだん慣れてくると、自分で冒険できるようになってくる。そして、せっかくの、絵に合わせたカスタムメードの額装なのだから、冒険しないともったいない。そうは言っても、たくさんの額や台紙の中から、自分一人で選ぶのはなかなか難しいので、誰か友達と一緒に行くのがお薦めだ。迷っていると意見を言ったり、新しいアイデアをくれたりする。
まずは、シンガポール在住のSumiさんが描いてくれた絵。Sumiさんはインドネシアへ遊びに来た時、うちのねこのフレディに会っている。私がシンガポールへ遊びに行った時には、面白い場所をあちこち案内してくれ、シンガポール名物のカヤトースト、チリクラブ、インドカレーなどを一緒に食べた。
これは、そんな楽しい思い出を、「フレディがシンガポールを旅行している」という想定の下で描いてくれた絵。シンガポールの食べ物シリーズ第一弾の「カヤトースト」に続いて、第二弾は「チリクラブ」。大きなカニのはさみに、フレディが手を伸ばしている。
第一弾の「カヤトースト」も額装済みだ。色鉛筆を使って、優しいプラナカン・カラーで描かれ、シンガポールらしいランの花が隅に配されている。台紙はえんじ色、額縁はカントリー風のナチュラルな木目の物にした。
「第二弾」は第一弾に合わせても良かったのだが、敢えて合わせないことにした。「カヤトースト」は、絵の大きさに対して額が小さすぎたか、という反省があった。また、パステル調の絵に対して、台紙の色が強すぎたかもしれない。「第二弾」の額装は、「第一弾」にはとらわれず、まったく新しい絵を額装するつもりで考えることにした。
今回の絵は、同じく色鉛筆で描かれているが、前回よりもはっきりした色彩で、赤が強い。色数が多くて、ごちゃごちゃしているので、シンプルな額装にすることにした。台紙は薄茶色。額は思い切って、ちょっと太めにしてみた。額縁も、いろんなニュアンスの物がある。白一色の物と、茶色で縁だけ白い物のどちらかにしようか迷ったが、茶色の方にした。
次は、ロンボク島の画家、飯塚正彦さんの絵2枚だ。ロンボク島へ取材に行った際に購入した。飯塚さんの絵はどれもすてきなのだが、大きい。しかし、中には、小さいサイズの絵も描かれている。白黒の、繊細なペン画が多い。その絵の束を見ていた時に、目に留まった2枚。彩色されており、両方ともに、ねこがいる!
一枚は、ねこがバナナの葉でサーフィンをしている。得意げにうまく波に乗るねこの後ろで、失敗して落ちている象の姿に頬が緩む。リンジャニ山、その後ろで輝く黄色い太陽と、なんだか「おめでたい」雰囲気を醸し出している、とても明るい絵。
もう一枚は、浜辺の風景だ。ピンク色のビーチに、海は青く照り輝いている。親ねこが頭に載せたかごには、魚、熱帯の果物と野菜があふれんばかり。子ねこは風車を持って駆けている。犬の鼻先には赤い蝶が飛ぶ。なんとものどかで平和な光景だ。
2枚とも、飯塚さんの得意とする、細かい点描とスポッティングが施されている。白い紙に黒い枠線が引かれた中に描かれており、これこそ「額装して」と言っているような絵だ。
一枚ずつ額装し、小さい額を2つ作るつもりだったのだが、同行していた友達のダグソトさんに「2枚一緒に額装したら?」と言われた。その発想はなかったが、なるほど! 別々に額装しても、どうせ、近い場所に飾ることになる。それなら、一緒にしてしまった方が飾りやすい。絵の大きさが微妙に違うのだが、店員さんに聞くと「できる」と言う。
順番は、下が「浜辺」で、上が「波乗り」。台紙は直線で切るのではなく、絵の大きさに合わせて、くり抜いてもらう。2枚の絵の間があまり離れると変なので、絵の間は2センチ空けて、額と絵の間は、それより少し広めの3センチ空けることにした。
額は、モスグリーンにピンクの線が入った物を、最初にダグソトさんが選んで当ててみてくれた。バナナの葉の緑、浜辺のピンクとぴったり合う。迷うことなく、それに決定。飯塚さんの立体的なスポッティングや海の輝きの表現、細かな筆致を直に見ていたかったので、アクリルもガラスもなしとした。
そして、出来上がり。どちらも素晴らしい。大成功だ。
Sumiさんの絵の方は、内側に傾斜している太い額縁が、絵に奥行きや立体感を与えている。視線はカラフルな絵から薄茶色の台紙、そして同系色の額縁へと移り、最後に白い線で締まる。絵をまったく邪魔しない額だ。
チリクラブを食べに行ったこの時は、ランチタイム終了間際に店に入ったのだ。チリクラブの大皿が運ばれてきて、「わー」と写真を撮ったりしている観光客然としたわれわれを見て、「これは終わらない」と見た店員さんが、カニの殻をむくのを手伝い出した(早く終わらせるため)。殻をむいた身をどんどん皿に載せていき、カニのわんこそば状態。その面白かった体験も思い出す。シンガポールで見た映画、泊まったホテル、海辺の風景も。
飯塚さんの優しい絵は、同様に優しい色合いの額の中に収められている。ただ、色と雰囲気をちょっと絵に合わせすぎただろうか。もう少し「主張する」(青など)、または「主張しない」(白など)額にしても良かったかもしれない。
2枚を一緒にしたので、「ロンボクの海辺」という、物語性のある絵2枚を、同時に見ることができる。この絵も、見ていると、ロンボクの美しい海を思い出す。
額装代(2023年7月)
「チリクラブ」(額の大きさ 縦38cm x 横50cm) 47万5000ルピア ※アクリル板付き
飯塚さんの絵2枚(額の大きさ 縦39cm x 横37cm) 24万5000ルピア
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