ネパールのロクタ紙に活版印刷したインクをじっくり乾かした後は、製本作業。「製本」と言っても、通常の中綴じ本のように、まとめた紙の片側を、のりや糸で綴じる作業ではない。巻物になるので、広げた布の上に順番に紙を貼っていく。これが、簡単そうに見えて、実は大変な作業だ。
巻物なので、読む時には平らにほどいて、読み終わったらまた巻いて、という動作を何度も繰り返す。薄めのでんぷんのりをメインにしないと、乾いたら硬くなってしまい、そうした動きに沿わなくなる。
でんぷんのりで貼った紙をそのまま放置して乾かすと、紙は反る性質がある。このため、必ず「押し乾かし」、すなわち、乾くまでプレスし続ける必要がある。でんぷんのりは乾くまでに一晩以上かかる。
巻物なので、長くてプレス機に入らないし、プレス機にかけるとロクタ紙の微妙な凹凸の風合いも消えるかも。そこで、紙を貼り付けてはアイロンで乾かす方式でいきました。
間にクッキングシートを挟んで、アイロンの熱でのりの水分を飛ばしつつ、数分間プレスするという「時短」のテクニック。本の修理や保存でよくやるやり方です。古書は、耐久性や形状から、プレスできない物が多いですから。
バティックの布を広げ、その上に5枚の紙を並べ、順番に貼っていく。まずは紙1枚を貼って、アイロンで乾かして固定し、次の1枚を貼る。カッターと定規を使って紙の縁を切り落とし、その紙の端に対してきれいになるように5枚の写真を貼り込む。写真はレーザープリンターでカラー出力(耐水性インク使用)したものだ。最後に、布を裁ち落とす。
写真は、やはりあると読むのが楽しいと思うよ。紙によって、文字がうまく出てないのも、写真で見えるよ。
紙を貼り付けた布を、広げたままで数日間、乾燥させる。その後、芯となる軸を付け、また1日乾かす。それから、慎重に巻いてみる。巻いたまま、1日置く。
1日経ったら、巻きをほどいて、紙の角のはがれている所がないか確認する。もしあったら再びのり付けし、アイロンで乾かす。平らにしたまま、1日置く。布から出ている糸の端は、見付けたら、こまめに切る。そしてもう一度、慎重に巻く。
これを3回ぐらい繰り返しているうちに、はがれた紙縁も、出ている糸端も、とりあえず目に付くものはなくなります。収束しつつあります。
秋の夜長。机の上でプレス作業。足元には、ねこ。(つづく)