日本在住の友人の轟英明さんから「雇われ社長としてハラルマートを開店するのですが、店内に賀集由美子さんのバティックを飾れないものか検討中です。適当なデザインとサイズ、購入について、相談に乗っていただけないでしょうか?」というご連絡があった。もちろん、「喜んで!」と返事をした。
現実的には「賀集さんのバティック」は難しいので、私のお薦めのバティック布を選んで提案することになる。枚数は2〜3枚、予算は6〜7万円とのこと。バティックの値段の幅は非常に広いし、6〜7万円あれば予算的には十分だ。
ハラルマートの場所は千葉県松戸市五香駅から徒歩2分。戦後に出来た最も古い団地の一つ、常盤平団地が近くにあり、今ではインドネシア人技能実習生ら50~100人程度が住んでいる。松戸市とその周辺には、介護福祉士の資格を取得して介護施設で働いているインドネシア人夫婦が増加しており、インドラマユ、チレボン、マジャレンカなど、西ジャワ州の出身者が多いとのこと。それならジョグジャカルタやソロといった中部ジャワより、西ジャワ州のチレボンやインドラマユのバティックの方が良いだろう。
店内の様子を写真や動画で見せてもらった。インドネシア食材や調味料の定番が棚に並んでいる。サンバル、ココナッツミルク、コーヒー、茶、ヤシ砂糖、インドミー、缶詰。大きい冷蔵・冷凍ケースの中には、野菜、テンペ、バッソ、FIESTAブランドの加工肉が入っている。


店の両側の壁が空いていて、特に、冷凍・冷蔵ケースの上が白く目立つ。「ちょっと殺風景な店内なので、何か飾りたいなぁと……」(轟さん)。
冷凍・冷蔵ケースの上のスペースを測ってみると、縦約150cm、横約450cmあり、横長のバティック布2枚を並べて飾れそうだ。
轟さんの希望で、2枚のうちの1枚は「賀集さんのインドネシア地図」となった。インドネシアらしさを打ち出す上でも、インドネシアと日本をつなぐという意味でも、このバティックに優るものはない。
賀集さんの制作したインドネシア地図はもうないので、複製してもらおうと、チレボンのアリさんに連絡した。すると、以前に複製した1枚がまだ残っていると言う。注文してから制作するとなると結構な時間がかかるので、これはラッキーだった。写真を轟さんに送って確認してもらい、すぐに購入した。
もう一枚は、どうしようか。
あんまり「高級すぎない」のが良さそうです。高級食材店とか、アートギャラリーではないので。そういう意味で、「ペン子ちゃん」が入っているデザインは、店の雰囲気やイメージに合わせやすいです
轟さん
横向きの柄で、「パターンの繰り返し」よりは「絵画」的なバティック。「インドネシア」と、わかりやすいバティック。「インドネシア地図」の横にあって、違和感のないバティック。
悩んだ末に提案したのは、最近、個人的にハマっている「インドラマユの魚バティック」だ。インドラマユの漁師が下絵を描き、魚や漁船をモチーフにしている。大胆で生き生きした絵がとても個性的で、気に入っている。
絵画のようなバティックなので壁に飾るのが合っているし、眺めていると面白い。バティックを知っている人が見たら、バティックらしい伝統文様で空や海が埋められているとわかるし、バティックを知らない人が見ても、「絵」として楽しめる。
「海」にフォーカスした賀集さんのインドネシア地図の横に置いても、ぴったり来る。賀集さんの描いたインドネシア全域の海をぐーんとズームしていくと、漁船に乗って魚を穫る「インドラマユの魚バティック」になる、というイメージ。
そしてまたズーム・アウトして、この海を黒潮に乗って北上すると、日本に着く。賀集さんのインドネシア地図の左上にも、「この先は日本ですよ」とでも言うように、日本国旗を掲げた船が浮かび、船の中でペン子ちゃんが手を挙げている。

インドネシアの地図バティックはアリさんから直接買ってもらうことにして、2枚目は、私が購入していた「漁船のバティック」を譲ることにした。私はバティックをよく買うのだが、「自分のコレクションとしてずっと持っておきたい」というより、「気に入ってくださる方、活用できる場があったら、譲っても良い」という考えだ。「バティックは使ってこそ」が賀集さんの教えだったし、新しいバティックをまた買えば良いし、そうやってインドネシアのバティック産業を少しでも回すことができたら、ありがたい。
さて、バティック2枚は無事にインドネシアから日本へ届き、轟さんから、「実物は共に素晴らしいですね。店に飾るのがもったいないぐらい」いう連絡が来た。店の壁に貼ってみたところ、一方の壁に2枚並べると、インドネシア地図の端を折らないといけないため(端は折ってもいいか、と思っていたのだが)、「ちょっとギリギリすぎて見栄えがどうかという懸念」により、両側の壁に1枚ずつ貼ることになった。「レジから見たら、なかなかいい感じ」と言う。
外から店をのぞいた人がペン子ちゃん地図を見て「おや?」と気に留めてくれたら、それだけでうれしいですね
轟さん



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