「コロナと龍」のバティック・スカート

「コロナと龍」のバティック・スカート

 天皇皇后両陛下との接見で身に着けた、チレボンの巨匠カトゥラさんの「コロナと龍」バティック。茶色と紺の色違いで2枚買った。着用した茶色の方は、布のままで大事にしまってある。紺色の方は、思い切って仕立ててみようか。

ヘム(シャツ用のバティック生地)

 竹田有希さんの「シャツの前身頃部分が両端に来るようにしたスカート」というアイデアがいけるのではないか、と、ずっと思っていた。しかし、大事なバティックだし、何と言ってもヘム(シャツ生地)。インドネシア人の仕立屋さんに頼んだら、戸惑われるのではないだろうか。布の上にばらばらに配置された模様をどう扱うか、アイデアと腕を試される、非常に難しい生地だと思う。

 どうするか悩んでいたところ、日本でバティック仕立てをしているinch by inch(インチ・バイ・インチ)さんが来イされた。inch by inchさんは、文化服装学院の通信教育で学んだ後、ジャカルタ駐在中にエスモード・ジャカルタのショートコース(仕立てコースとデザインコース、約6カ月)を修了した。インドネシアでバティックに魅せられ、バティックの仕立てを「半分、楽しみで」始めた。

 「バティックは、布をどう使うかによってまったく変わってくるので、考えるのが楽しい。普通の布だと、縦、横が決まっているが、バティックは『パギ・ソレ』(布の右半分と左半分に、上下の向きを変えて、違う模様を2種類入れる様式)もあるし、トゥンパル(三角模様)もあるし。裏がかわいかったりして、裏を表にして仕立てたり。自由さが楽しい」と話す。

 この「コロナと龍」バティックの仕立てを相談したところ、やはり、2つに絵が分かれた前身頃の部分を使おう、ということになった。「足りない分は、同じ色の、違う素材の布を足す。でも、この2つの分かれた絵が『合わせたらぴったり合う』というのも面白いから見せたいな。間に違う布は入れるけど、左右の絵を少しだけ離して、『合わせたら、つながる』というのを見せるのはどうだろう」と、inch by inchさん。アイデアがどんどん出て来る。「お任せします」と布を託した。

コロナと太陽、龍と雨雲
コロナと太陽、龍と雨雲。カトゥラさんの力強い絵(写真はinch by inchさん)

 そして、日本へ帰ったinch by inchさんとのやり取り。

 なかなかお預かりしたバティックが形になっておらず、ごめんなさい。

 すでにあるパターンでないので、いろいろ考えています。

 打ち合わせた時のものとは違いますが、華子さんはいろんな風に着こなせるスカートがいいかなと思い始め、サルン型(筒型)にして、着方によって(ひだの寄せ方によって、いくつかの柄の出方やシルエットを)楽しめるようなのもいいかなと考えています。

 もうしばらくバティックを眺めて考える時間をください。

 こんばんは。

 スカートの後ろ身頃に、hemの後ろ身頃の模様を使ってもいいでしょうか。良いイメージが湧いています!

 こんにちは。

 ①せっかくの龍とコロナの模様にハサミを入れたくない

 ②ラップスカートも考えたが、「スカート」というよりカインを巻いているイメージになってしまう(特に直線で断った布からラップスカートにする場合)

 ③経験上、最も履きやすいスカートの形

 上記の3点から、シンプルなウエストゴムスカート(あまり広がりのない)が間違いないという結論に至ったのですが、そのようなシンプルな形でもよろしいでしょうか。あまりにシンプルな形なので、インドネシアのお仕立て屋さんでも頼めそうで……。

 もしかしたら、ウエストはゴムにしないで、ギャザーを寄せてファスナーを付けるかもしれません。その方が、少しフォーマルになるので。多分、そうします。

 このような「作品」バティックは、服にするのがすごく難しいですね。カトゥラさんのすごさに縮み上がってしまいます。

 そして、出来上がり!

スカートの前
スカートの前
スカートの後ろ
後ろ(写真はinch by inchさん)

 大変お待たせいたしました。
 スカートできました。
 なかなか良い感じに仕上がったのではないでしょうか。
 カトゥラさんの素晴らしい作品をしっかりとアピールできるスカートだと思います。
 気に入っていただけると嬉しいです!

 久しぶりにすごいバティックと向き合った時間でした。
 やはりバティックのお仕立ては楽しいです。

 貴重な機会をどうもありがとうございます。

 これはすごい。すごいと言うのは、まず、カトゥラさんの絵を切っていないこと。前身頃も、後ろ身頃も、絵をそのまま活かしている。それでいて、ヘムとはまったくわからない。スカートにぴったりの形になっている。バティックの布をこれだけ活かしたままで、スカートになっていることに感動した。

 最初は使わない予定だった後ろ身頃が、スカートの後ろに使ってある。意外にいける。と言うか、ぴったりだ。

 「寸法的に、意外と良いバランスでした。前後の幅が違っているので、ファスナーは左のやや後ろの位置になりました。ウエストに袖ぐりのメガムンドゥンを配してみました。うまい具合に前身頃に、バランス良く配置できました」

 シャツの後ろ身頃部分を見ると、「やっぱりこれは派手すぎて、シャツとして着るのは無理だ」と思う。スカートがちょうど良い。前で履いても、後ろや横で履いても、その時の気分で、好きな部分を前にして着られそうだ。不思議な柄の、不思議なスカート。

 そして、ヘムをスカートに出来るなら、仕立てたい物がいろいろある。これまでは「格好いいバティックだな……あっ、ヘムか……(がっかり)」と、買うのをやめることがよくあった。バティックの可能性が大きく広がる気がする。

 ヘムをスカートに、というのは、カトゥラさんもびっくり、に違いない。

inch by inch
仕立て料4000円+送料

メール:
inchbyinch.since2014@gmail.com

ホームページ:
https://inchbyinchsince2014.wixsite.com/batik

ブログ:
http://inchbyinchsince2014.blogspot.com

インスタグラム: https://www.instagram.com/inchbyinch.since2014/

ウエスト部分のメガムンドゥン

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