[バティックを使う]旅行に一枚

[バティックを使う]旅行に一枚

 母が旅行先で入院し、ジャカルタから駆け付けた時のこと。マヌカハニー、梅エキスなど体に良さそうな物を適当に荷物に入れる中で、バティックも一枚、入れた。「旅行の時にバティック一枚あると便利ですよ」とは、賀集由美子さんに教えていただいたことだ。

マッサージ用ウェアにしたり、寒かったら羽織ったり、ビーチとかで着替える場所がない時に、布で体を隠して着替えたり、マンディ(水浴)したり。

賀集由美子

 布一枚ならそれほどかさばる物でもないし、荷物に入れておくのが習慣になった。使う用なので、高級品ではなく、手軽に使える安い物を入れる。

 この時も、病院で使うためのバティックなので、汚れても惜しくない物を選んだ。インドラマユのアアットさんの手描きだが、高い品ではない。海の生き物とペン子ちゃん柄だ。カラフルな色合いの、ユーモラスなかわいい生き物たち。これが意外な面で役に立った。

 高級病院の個室だったので、ベッドの正面にはテレビの大型液晶画面がはめ込まれている。しかし、母はテレビを見ない。その液晶画面に「額絵」のようにバティックを掛けた。いくら立派でも無機質な病室。そこにバティックの布一枚があると、それだけで不思議に、「家」の雰囲気になった。

 あまり細かく描きすぎていない、インドラマユのおおらかな手描きバティックがちょうど良かった。ベッドから目を上げると、自然にバティックが視界に飛び込んで来る。

病院のテレビに掛けたバティック
病室のテレビに掛けたバティック。インドラマユのアアットさんと賀集由美子さんのコラボ作品。海の生き物たちが楽しそうに泳ぐ中に、ペンギンとペン子ちゃんが混じっている。周りの花、ピンクと水色の色合いもかわいらしい

 最初に見た時、「黒地はあんまり好きやないんやけど……」と、ちょっと不満だった。だけど、後になって考えると、あのバティックは、色、柄、全てが最高の選択だったと思う。
 今は、どこのホテルでも大抵、ベッドの前にどーんと大画面があってうっとうしいけど、バティック一枚で本当にガラッと部屋全体の雰囲気が変わるから、これは本当にいい思いつき!!
 枕カバーにしたり、羽織ったり……なんて実用とするのは、よっぽど安宿でなければ要らないだろうけど、これ一枚で「私の部屋」になるのは素晴らしい!
 ただ、帰る時に忘れて行かないかが、とても心配だった。なじみすぎて危険。一人旅に使う時は、忘れ防止対策を何か考えないと。

 私もコロナ禍中に日本へ一時帰国した時、隔離ホテルではバティックをテレビに掛けていた。狭い部屋から一歩も出られない中、心が慰められた。旅行にこんな大きな「額絵」は持って行けないが、バティックなら、持って行ける。

日本の隔離ホテルで
日本の隔離ホテルで。上と同じ、アアットさんと賀集さんのコラボ作品。こちらはシンプルな色合い。黒地に海の生き物たちが引き立つ

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