ゆるい、面白い、小さな世界 [100枚のバティック(46)] 

ゆるい、面白い、小さな世界 [100枚のバティック(46)] 

 ジャカルタで開催されたバティック展示会(Gelar Batik Nusantara=GBN)」へ行ったものの、買う気はまったくない。知り合いに挨拶して帰ろう、と思っていた。それなのに、なぜか買ってしまうのがバティックの恐ろしい所だ。いくら「しょっちゅうバティック産地に行っている(から、現地で買える)」と言っても、バティックは一期一会。その時に出会った物を買わないと、次にまた出会えるとは限らない。

 チレボンのアリさんのブースで目に留まったのは、手前に並べてあったコースター。薪の火の上に鍋をかけて料理している人の絵が、なんだか面白い。山登りにもキャンプにも長く行けていないので、「いいなぁ」と感じてしまう風景だ。「これは外で料理しているところ?」とアリさんに聞くと、「そう。水をすくっているところだ」との答え。一体、何を料理しているのだろうか。

野外で料理する人
「煮えたかな?」。野外で料理する人

 そして、やたらに細かく描き込まれた汽車がある。車両も付けずに、汽車の部分だけが、トコトコと線路を走っている。煙突から出た煙が空の雲と混じり合う。「汽車の散歩」とでも言いたくなるような絵。枕木の形も何だか変で、三次元に行ってしまいそうだ。空を走る列車なのだろうか。「チレボン銀河鉄道」みたいだ。

汽車

 この2枚のコースターから目が離せなくなり、特に使う当てもないのだが、買うことにした。すると、奥からどさっとコースターの束が出て来た。まだこんなにあったの?! えええっ、面白い!! 

 やたら写実的な「サンダル」があるかと思えば、デフォルメされた「田植えをする人(?)」、ヨーロッパの景色のような「木陰で読書をする女性」などなど。

 ゆるい。面白い。味わい深い。コースター1枚ずつが小さな世界のようで、「小さいからこそ」だろうか、見ていると、なんだか没入しそうになる。絵本の挿絵のようで、一枚のカイン(布)に大きく広がっていくバティックの世界とはまた違った味わいだ。

インドネシアでよくあるビーチサンダルだが、素晴らしい描写力。さらに、背景も周囲の模様も凝っている
インドネシアでよくあるビーチサンダルだが、素晴らしい描写力。さらに、背景(床? 敷物?)も凝っている。額縁のような周囲の細かい模様も絵にマッチしている
田植えをする人
田植えをしているのか、草を抜いているのか? 空に太陽と雲。思いきりシンプルな絵だが、白い背景は全て蝋伏せするので、作るのはなかなか大変だ。展示会へ一緒に行った人が「私はこのゆるさが好き」と言うので、買うことに決定
木陰で読書する女性
木陰で読書する女性。空には鳥が飛んでいて、なんとも優雅なひととき。この絵の中へ行きたい

 1枚だけ見ているより、何枚か並べた方が楽しい。好きな6枚を選んで購入した。気に入った物をランダムに買ってしまったのだが、「テント」(※買わなかった)→「サンダル」→「野外料理」などと並べていって、ストーリーを作っても面白そうだ。

コースター
バティック・アリリ作

13cm x 13.5cm
2025年購入

ラジオ
ラジオ。周りの音符がかわいい

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