賀集由美子さんによる「バティックの功労者」たちの紹介です。インドネシア人の有名なデザイナーや工房主、日本人のバティック・コレクター、賀集さんをバティックへ誘うことになったノルウェー出身のアメリカ人と、多岐にわたる人たちをピックアップし、紹介しています。さまざまな背景の人々にバティックが支えられてきたことを改めて感じます。そして、賀集さんもその一人であるのは間違いありません。賀集さんの「横道にそれた」話も面白いので、賀集さんのセミナーでの語り口をお楽しみください。最初の一人は、賀集さんの師匠でもあるカトゥラさんです。(セミナー写真・竹下香奈恵さん、セミナー以外の写真と写真説明・池田華子)
ここからはバティックの功労者。これですね、カトゥラさん。

彼はね、デザイナーであり、工房主であり。チレボンの工房主って、(カトゥラさんのように)自分でデザインできる人って、ほとんどいないんですよ。みんな、デザイナーみたいな人が巷(ちまた)にいるんで、発注して描いてもらって。
カトゥラさんの仕事の一つが、これですね。あ、逆。すみません。こうですね。

うん。まぁ、カニ。カニ模様か。彼の特徴っていうのは、やっぱり、なんだろうな……「白場」の使い方。埋めすぎない。こう、余白を「がちっ」と残して、なおかつ……。
この時代は、結構、この「トゥンパル」、「クパラ」ですね(編注・上写真の右部分。腰に布を巻いた時に前面に来て、アクセントとなる)、新しい物はわりと小さくなっています。昔はもっと大きかった。
でね、カトゥラさん、いろいろ手がけていて。これはね、レプロ。「レプロドゥクシ」(reproduksi)っていうか、「レプロ」(repro)って呼んでますけど、「複製」です。



後で出て来ますけど、(バティックの)コレクターで、もう亡くなられているんですけど、クスマ英子さんって方が、コレクションを持っていて。その(元の)コレクションでは、ベースは白なんですね。(複製した)これは、(ベースに)「タナハン」っていう地模様をぶわーっと両面、描いてます。
タナハンを描いている人は、皆、プカロガンの人。だから、イセンとタナハンに関しては、プカロガン・スタイルなんですけども、カトゥラさんの場合は「模様を再現する構成力」っていうのが、やっぱり素晴らしいんで……。この辺の処理もすごいですよね。
こういう、既製のバティックっていうか、見本があるバティックとか、あと、図録から、レプロドゥクシをするっていう仕事もします。チレボン伝統文様だけでなくてね。文様的には、これはプカロガンです。ただ、技術的にはチレボンでも作れる。
(カトゥラさんは)すごい面白いおじさんで、チレボンへ行くと、庭とか掃いてますから、適当に話しかけて(あげて)。
(笑)
すごいお話好きなんで。楽しいらしいんですよ、誰かが来てくれて、話してくれると。全然、なんかこう、「偉そうな所」はまったくない、っていうか。是非ね、チレボンへ行く機会があったら。(カトゥラさんは)今ちょっと、病後は、あんまりジャカルタで展示会とか講演会とかに出て来られなくなっちゃったんで、(チレボンへ)行く機会があったら、是非寄って、話してあげてください(笑)。


編注・カトゥラさんは2024年3月16日、逝去した。
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