賀集さんのバティック入門講座、第2回は「バティックの値段」についてです。高いバティック、安いバティック、なぜ値段が違うのでしょうか?(セミナー写真・竹下香奈恵さん、セミナー以外の写真と写真説明・池田華子)
バティックの価格っていうのは、多分、ほとんど工賃なんです。どれだけの職人がいて、その人にどれだけの日当なり請負制の報酬なりを支払ったか、っていうので、成り立っていくんですね。
まずは手描き(単色の場合)の工程をご説明します。
「下処理」っていうのは、布をピーナッツオイルとソーダ灰とで練るんですね。練って乾かして、練って乾かして、練って乾かして、っていうのを、高級な物だと1週間以上繰り返す。目的は何かって言うと、蝋が塗りやすくなるっていうのと、染料が入りやすくなる。手描きバティックでは必ず、必要な工程なんですね。
その次が、デザイン。デザインが元々ある場合は、ここをすっとばして、いきなりトレース。
その後に、イセン(isen)。イセンは細かい模様ですね。細かい点と線を描く。
その次が、白場。テンボック(tembok)ですね。テンボックっていうのは、蝋を塗る。ここの茶色い部分、わかりますか。こういうのをテンボックって言います。
多色だと、こういう工程をまずやった上で、蝋落としをして、さらにまた色を重ねるんで、ここ、2回目のイセンに戻るんです。また、この工程を繰り返していく。
こうやって工程が重なっていくにつれて、価格も当然、上がっていく。
バティックがどのようなバティックでどのような値段か、というのは、まず、工程の問題。あと次に大事なのは、どのような素材を使うか。
木綿(コットン)だけにしても、すごい、いろいろ。ちょっと安めの「プリマ」(Prima)っていうのは、型押しなんかによく使われている、ちょっと粗い感じのコットンです。その上級に、「プリミシマ」(Primissima)っていう生地があって、価格は全然違います。このベースの価格っていうのがバティックの値段に影響します。
あとまぁ、染料ですよね。染料が草木染めであったり、化学染料であったりとかするんですけども、化学染料でも値段の高い染料もあるので、そういうのも、原価を出す時に、すごく重要になりますね。
蝋っていうのはそんなに影響しないんですけども、例えば白場が多くて、ものすごく蝋をいっぱい使った場合には、やっぱりコストに影響してきます。
そのほかに、すごく大事なのが、誰が作業したか。職人ってね、3種類あるんですよ。インドネシア語で言う「harian」みたいな、日当制の人。要するに、1日、工房に来たら、日当がいくらかもらえる、っていう人。あと、「borongan」、請負制の人。1枚作業してなんぼ、っていう。
クウォリティーも当然、違ってきます。日当の人は、全部が全部じゃないんですけど、やっぱり、ターゲット考えなくていいんで、1日に例えば30センチ角しかできなくても、それだけの(決まった)給料をもらえる。ただ、請負の場合は、1枚終了していくら、っていうことになるので、当然、急いだりとかね、仕事が粗くなったりとかしますよね。
こういう感じで、工房に来ている人、来ていない人っていう風に、作業しています。
そのほかに、産地では、例えば1枚作り上げて、作った人の利益を乗せていくらって感じなんですけど、流通経路ですよね。間に業者が入っているとか、地方の人がジャカルタで売る時には、経費とか、かかりますよね。
いろんな要素が絡んで来るんですけど、基本的に、布、染料、あと、工程にかかった時間、工程にかかった給料、っていうのが、バティックの値段を決める決め手っていうことになります。(つづく→【賀集さんのバティック入門講座】(3))