多色染めだと当然、単色染めよりも時間と手間がかかり、人件費が多くかかるので、それが値段に反映される、という話。「バティックの値段は多分、ほとんど、これ(=人件費)ですね」と賀集さん。(セミナー写真・竹下香奈恵さん、セミナー以外の写真と写真説明・池田華子)
あと、これなんですけども。さっき言った、浸染(布全体を浸して染めるやり方)の場合の「プロセス1回」と「プロセス2回」の違いです。
これ、「ピリン・スランパッド」(Piring Selampad)って言って、チレボンのお皿の伝統文様なんですけども、これは、染めの工程的には、水色の上に紺。あ、水色、青、紺か。3色。結局、方向性的に同じなんで、蝋落としは1回なんですよ。水色を染めて、伏せて、青を染めて、伏せて、紺を染めて、伏せて。で、蝋落とし、っていう形で、こうなる。
それを多色にした時が、これ。これは最初に……赤ですね。「最初に赤」が、なんでわかるかっていうと、ここに赤い線、見えますよね。で、青が2回目。青と、このベースが2回目、という工程になります。
同じモチーフなんですけども、その工程によって、全然、色とかも変わるっていう感じですね。
これは、さっきの青白(1回プロセス)の方。サロンのクパラ、「頭の部分」って言いますけど。えーっと。すみません、白板がとんでもないことになってしまった。
Kepala
今はちょっと、あんまりね、サロンってなくなってきちゃったんですけど……これも、わかりますよね。要するに、水色、ちょっと濃いめのブルー、紺、っていう形で染めてます。
これがさっきの2色のやつ。
dua kali
2回ね。
dua kali proses
「バティック、なんで高いんだろう?」って言ったら、プロセスが「dua kali」だったりとか、そういうこと、ありますよね。
あと、さっきの「どのような職人が作業に当たっているか」っていう。さっき、「日当制」と「請負制」って言いましたけど、(請負の場合は)家で働くことが多いんですけども、たまに、インドラマユなんかで、工房に来てるんですけど日当でもらえるわけじゃなくて、その作っている布が出来上がったら、そこで給料が発生する、とか、そういう人もいます。そういう場合は、例えば、それに一週間かかったら、(最初に)前金とかでもらっておいて、出来上がったらまた最後にもらう、っていう。
この辺(=請負制)は、ある程度、わりに(工賃を)安く抑えることができますね。ただ、仕事の質がどうなるか、とか……例えば、ほら「家で布がネズミに噛まれた」とかね。なんかそういうリスクはすごいあるんで。
(笑)
自分で管理はできないわけですよ、工房主は。やっぱりすごくクウォリティーの高い物は、大体、日当制で作られている。
あとまぁ例外的に、チレボンは今、職人不足で、プカロンガンにすごく作業を手伝ってもらっている。プカロンガンにも、ちっちゃい、工房のサテライトがあって、そこで作業させたりとかしてるんです。本来は請負制だったんですけど、やっぱり「いい職人を確保しなきゃいけない」っていうんで、日当制。自己申告。「私は8時間働きました」っていう。まぁ、もう信じるしかない(笑)。
そういうような、いろんな形態があります。
やっぱり、ここが一番ですよね。「バティックの値段」っていうのが、なんでこんなにするのかっていう時に、ここでどれだけお金を払ったか。多分ね、ほとんどこれです。バティックの(値段は)。
時々、みんな、「赤」になっちゃってて。値段を聞かれて適当に「こんなもんかな」って思って、売るじゃないですか。で、よくよく計算したら、マイナスだった、とか(笑)。そういうことは、なんかすごいよくあります。だから、工房が一番儲からないかな、うん。工房から、例えば(ショッピング)モールさんとかに(商品を)出して、委託(先)と(配分が)フィフティーフィフィティーぐらいだったら、一番、工房がダメかもしれませんね。
今は職人の確保がすごい大変なんで、ここでケチったらもうおしまい、って感じ。えらいことに。(つづく→【賀集さんのバティック入門講座】(8))