[賀集さんのバティック入門講座](7)工房が一番儲からない?!

[賀集さんのバティック入門講座](7)工房が一番儲からない?!

多色染めだと当然、単色染めよりも時間と手間がかかり、人件費が多くかかるので、それが値段に反映される、という話。「バティックの値段は多分、ほとんど、これ(=人件費)ですね」と賀集さん。(セミナー写真・竹下香奈恵さん、セミナー以外の写真と写真説明・池田華子)

 あと、これなんですけども。さっき言った、浸染(布全体を浸して染めるやり方)の場合の「プロセス1回」と「プロセス2回」の違いです。

プロセス1回
セミナーでのスライド写真。1回プロセス

 これ、「ピリン・スランパッド」(Piring Selampad)って言って、チレボンのお皿の伝統文様なんですけども、これは、染めの工程的には、水色の上に紺。あ、水色、青、紺か。3色。結局、方向性的に同じなんで、蝋落としは1回なんですよ。水色を染めて、伏せて、青を染めて、伏せて、紺を染めて、伏せて。で、蝋落とし、っていう形で、こうなる。

 それを多色にした時が、これ。これは最初に……赤ですね。「最初に赤」が、なんでわかるかっていうと、ここに赤い線、見えますよね。で、青が2回目。青と、このベースが2回目、という工程になります。

 同じモチーフなんですけども、その工程によって、全然、色とかも変わるっていう感じですね。

プロセス2回
同じく、セミナーでのスライド写真。同モチーフの2回プロセス
バティック・アリリ作「イチゴ」
賀集さんの見本とは違う物だが、上記の説明として、バティック・アリリ作のイチゴ柄バティック(池田所蔵)。これはピンク(薄いピンクと濃いピンク)と緑(薄い緑と濃い緑)の2回プロセス。ピンクが1回目。緑の葉や緑のイチゴの縁に、ピンク色の線が見える。これが、ピンクを先に染めた、というしるし
バティック・アリリ作「花皿」
こちらもバティック・アリリ作の美しい多色バティック、花皿模様。赤が1回目のプロセス
プロセス1回
セミナーのスライド写真。布のこの部分を「クパラ」と呼ぶ

 これは、さっきの青白(1回プロセス)の方。サロンのクパラ、「頭の部分」って言いますけど。えーっと。すみません、白板がとんでもないことになってしまった。

Kepala

 今はちょっと、あんまりね、サロンってなくなってきちゃったんですけど……これも、わかりますよね。要するに、水色、ちょっと濃いめのブルー、紺、っていう形で染めてます。

プロセス2回
セミナーのスライド写真。2回プロセスの布の「クパラ」

 これがさっきの2色のやつ。

dua kali

 2回ね。

dua kali proses

 「バティック、なんで高いんだろう?」って言ったら、プロセスが「dua kali」だったりとか、そういうこと、ありますよね。

 あと、さっきの「どのような職人が作業に当たっているか」っていう。さっき、「日当制」と「請負制」って言いましたけど、(請負の場合は)家で働くことが多いんですけども、たまに、インドラマユなんかで、工房に来てるんですけど日当でもらえるわけじゃなくて、その作っている布が出来上がったら、そこで給料が発生する、とか、そういう人もいます。そういう場合は、例えば、それに一週間かかったら、(最初に)前金とかでもらっておいて、出来上がったらまた最後にもらう、っていう。

 この辺(=請負制)は、ある程度、わりに(工賃を)安く抑えることができますね。ただ、仕事の質がどうなるか、とか……例えば、ほら「家で布がネズミに噛まれた」とかね。なんかそういうリスクはすごいあるんで。

(笑)

 自分で管理はできないわけですよ、工房主は。やっぱりすごくクウォリティーの高い物は、大体、日当制で作られている

 あとまぁ例外的に、チレボンは今、職人不足で、プカロンガンにすごく作業を手伝ってもらっている。プカロンガンにも、ちっちゃい、工房のサテライトがあって、そこで作業させたりとかしてるんです。本来は請負制だったんですけど、やっぱり「いい職人を確保しなきゃいけない」っていうんで、日当制。自己申告。「私は8時間働きました」っていう。まぁ、もう信じるしかない(笑)。

 そういうような、いろんな形態があります。

 やっぱり、ここが一番ですよね。「バティックの値段」っていうのが、なんでこんなにするのかっていう時に、ここでどれだけお金を払ったか多分ね、ほとんどこれです。バティックの(値段は)。

 時々、みんな、「赤」になっちゃってて。値段を聞かれて適当に「こんなもんかな」って思って、売るじゃないですか。で、よくよく計算したら、マイナスだった、とか(笑)。そういうことは、なんかすごいよくあります。だから、工房が一番儲からないかな、うん。工房から、例えば(ショッピング)モールさんとかに(商品を)出して、委託(先)と(配分が)フィフティーフィフィティーぐらいだったら、一番、工房がダメかもしれませんね。

 今は職人の確保がすごい大変なんで、ここでケチったらもうおしまい、って感じ。えらいことに。(つづく→【賀集さんのバティック入門講座】(8)

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