黒ねこ、書店、ミステリーときたら買わない理由はない  「黒ねこの本屋」[ねこの本]

黒ねこ、書店、ミステリーときたら買わない理由はない  「黒ねこの本屋」[ねこの本]
フレディと「Toko Buku Kucing Hitam」

 表紙には黒ねこ2匹が向かい合い、その奥には、書棚にぎっしり本の並んだ様子の見える本屋の扉。この扉は開けるに決まっているだろう! 黒ねこ、本屋、ミステリーと、「買わない理由はない」要素の詰まった本。

 オンラインでのほぼ「ジャケ買い」で、「ミステリーらしい」ということしか確認していなかったので、本が届いて奥付を見てから、イタリアの小説と知る。ウィキペディア(イタリア語のみ)によると、作者はいくつか賞を受賞しているノワール作家。日本語訳はまだ出ていないようだ。イタリアの小説をインドネシア語訳で読むことになるとは……。2023年の本をいち早く翻訳して出してくれたインドネシアの出版社に感謝。

 主人公のマルツィオは、ミステリー・犯罪小説を専門とする「ミステリー書店」の主。開店後、商売はさっぱりだったが、ミステリー好きの老婦人ヌンツィアがあれこれサポートしてくれ、書店で「火曜ミステリークラブ」を主宰するようになってから、本は売れて人が集まるようになる。ところがヌンツィアが痴呆症となって施設に入り、書店は再び苦境に立たされる。

 救ってくれたのは、ある日、書店にふらっと入って来て、そのまま居着いてしまった2匹の黒ねこ。ミス・マープル、ポワロと名付けられた黒ねこと共に、スタッフが本の写真を撮り、「ねこのお薦め本」としてSNSに遊びでアップしたところ、本はバカ売れする。こうして商売は持ち直し、店の名前も「ミステリー書店」から「Les Chats Noirs」(黒ねこ)に変更することになった。

 一方、「火曜ミステリークラブ」はメンバー数人に減ってしまったが、「火曜探偵クラブ」と名前を変えて、集まりを続けていた。そこへ難解な連続殺人事件が起こる。「砂時計殺人事件」と名付けられたこの事件に警察もお手上げで、マルツィオの旧友の刑事アンジェラが助けを求めに来て、「火曜探偵クラブ」も、その謎解きに挑むことになる。

 ねこ&本&ミステリー好きにはたまらないお膳立てに加え、「イタリアらしさ」がおしゃれだ。例えば、マルツィオが密かに思いを寄せる刑事アンジェラが本屋に現れた時は、すらりとした長身に、髪は紫に染め、赤い革ジャケットに黒いジーンズ、赤いハイヒール、という姿。

 連続殺人事件の謎そのものは本格ミステリーというほどではないが、物語の背景や洒脱さが楽しい。そして、「本」と「ミステリー」に、黒ねこが似合うことを改めて知る。

フレディと「Toko Buku Kucing Hitam」
「フレディ書店」を開こうか?

ねこ度(5が最高)
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ねこ好きへのお薦め(同)
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ねこコメント
ねこはそれほど多く出て来ないのですが、その重要性(題名、表紙、役割)から「ねこ度」を高くしました。この本のねこは「福を呼ぶ看板ねこ」で、もちろん、かわいそうな目にも遭わないので、安心して読めます。イタリア語でねこ(複数形)は「ガッティ」と言うのですね!

Piergiorgio Pulixi, “Toko Buku Kucing Hitam”(BACA、2024年)
原書”La libreria dei gatti neri”(Marsilio Editori、2023年)
9万5000ルピア

https://www.tokopedia.com/postpress/toko-buku-kucing-hitam-piergiorgio-pulixi

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