[賀集さんのバティック入門講座](4)プリントはバティックではない

[賀集さんのバティック入門講座](4)プリントはバティックではない

セミナー会場が大きく沸いた「バティックとプリント」について。「バティック柄のプリント」と「バティック」について、混乱しているインドネシア人も日本人も多いのですが、その点をわかりやすく、面白く解説されています。(セミナー写真・竹下香奈恵さん)

 すみません、まず最初に私が謝っておこう、ということで。

 これ、1995年に出た本なんですけども、ここに「早わかりバティック」っていう、バティックに関する解説を書いているんですね。「近年は『サブロン』もしくは『バティック・チェタック』と呼ばれるシルク・スクリーンで染めたバティックも量産されている」っていう風に書かれています。

賀集さんのバティックセミナー。1995年出版の「インドネシアすみずみ見聞録」奥付
賀集さんのバティックセミナー。1995年出版の「インドネシアすみずみ見聞録」の「早わかり『バティック』」の項
賀集さんのバティックセミナー。1995年出版の「インドネシアすみずみ見聞録」の「早わかり『バティック』」の項

 当時はね、わりに、そういう解説が多かったんですよ。「プリントもバティックの範疇に入る」と。「バティックっていうのは、手描き、型押し、コンビネーション、プリント。その4種類である」っていうようなね。まぁ多分、全面的に、そんな感じだったのかな。

 過去の、25年ぐらい前のことなんで、すみません、みたいな感じなんですけど。

賀集さんのバティックセミナー

 次に、「手描きバティックは、なぜ涼しく感じるのか? 手描きとプリントを触って比べてみよう」。

 島根県三郷町(みさとまち)が最近、「クールビズ」でバティックを取り入れた、っていう記事があって。これが町長さんらしいんですけども。町議会がこういう感じ。

賀集さんのバティックセミナー。島根県三郷町
賀集さんのバティックセミナー。島根県三郷町の町議会

(えーっ
日本じゃないみたいー)

 これがフェイスブックですね。ここにも動画がありますんで、検索して、見てください。

賀集さんバティックセミナー。三郷町の「バティックシャツ」に関する記述
賀集さんのバティックセミナー。島根県三郷町

 「バリ島の民族衣装」は、ちょっとあれですけど、「バティックを使ったシャツ」、「バティックは蝋を使って絵や模様を描くろうけつ染めの技法が使われています」、これは正しい。ただ、見たところ、やっぱりプリントなんですよ。

(爆笑)

 やっぱり、別に町長さんだけじゃなくって、一般人は「バティックっていうのは南国の物だから涼しい」って思うでしょう? まぁそういうのは共通概念としてありますよね。それはなぜだろう、って考えて。

 これ、プリントなんですね。これがプリントで、これが手描きなんですよ。

(同じー)

 ほぼおんなじなんですけど。後で広げて見せますので。見せた方がいいかな。これがプリントで、こっちが手描き。

賀集さんのバティックセミナー。プリントと手描き

(へえーー、わかんない)

 わかんない。わかんないけど、触ると、ここは冷房が効いているんであんまりわかんないんですけど、普通の所で触ると、ひんやりしている。手描きの方が。それがなぜかって、ちょっといろいろ、私とか染織関係の友達とかとで考えて。

 この手描きバティックで使われているのは「プリミシマ」っていう生地なんですけど、私の友達いわく、この糸とか、1センチにどれだけ糸が入っているかとか、そういうのが関係してるんじゃないか、って。あと、バティックは蝋が載りますので、蝋落としをしても「残蝋」っていうか、蝋が残りますよね。それがなんだろう、「パリっと感」というか、パリっとしている。蝋があることによって、普通の生地よりも水をそれほど吸わないから早く乾く、っていうことなんじゃないか、っていう。これもまだ仮説です。

 もしちゃんと調べたければ、日本の研究所とかに布を出して、一体どういうことなのかって(調べてもらわないといけない)。まぁ、「こういう暑い所で開発された衣装(だから涼しいはず)」っていうのは、気持ち的にはわかりますよね(笑)。

(笑)

 まぁでも、(プリントについては)私も、自分でも、間違えてたんで。そういったケースも多分多いと思います。勘違いしている人は日本人だけでなくてインドネシア人もたくさんいるし。ただまぁ、やっぱり知ってほしいのは、「防染」っていう、さっき言ったような「蝋で伏せて作る」っていうのがバティックだ、っていうこと。私が昔書いたような概念は間違っている、ということですね。

 とにかく蝋を使わない物はバティックとはみなされないんで、言葉として、「バティック柄の布」というのがあります。

Tekstil bermotif batik

賀集さんのバティックセミナー。「バティック柄の布」

 こういう言葉は、インドネシア語でもよく使われる。「bermotif」は柄ですよね。バティック柄の布、テキスタイル。

賀集さんのセミナー

 これはすごく微妙な言葉なんで、私の師匠のカトゥラさんなんかは、「もう、ここに『バティック』を使っちゃだめ」と。「プリントはもう、ただの『テキスタイル』でいいんだ」と。バティック・プリンティングとか言うと、やっぱり混乱するからね。そういうのは、プリントのテキスタイルとして楽しめばいいんだ、っていうような意見も、今は出てます。

 プリントに関しては情報が錯綜してるし、ものすごく精巧に出来たプリントも今はあるんで。売ってる側もわかってなかったりするんで。

 まぁとりあえず、バティックとは、

  • batik tulis(手描き)
  • batik cap(型押し)
  • batik kombinasi(コンビネーション)

ですよね。(つづく→【賀集さんのバティック入門講座】(5)

参照
美郷町 インドネシアの伝統織物を使ったシャツで業務
https://www3.nhk.or.jp/lnews/matsue/20220729/4030013338.html

報道発表 三郷町
https://gov.town.shimane-misato.lg.jp/files/original/20190416121557106d079bc96.pdf

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