破れたバティック、修繕のすご技

破れたバティック、修繕のすご技

 チレボンのカトゥラ工房で買った高級バティックが2枚、破れてしまった。2枚とも壁に掛けたり貼ったりしてあったのだが、ふと見たら、破れている。多分、ねこが爪を引っ掛けて破ったのだろう。

 「生命樹」の方は、模様部分には幸いほとんどかかっていないが、背景の白(クリーム)地の部分が4カ所、縦に裂けている。「ガムラン隊」は、踊っている人の腕の部分が、これまたばっくり縦に裂け、布の一部がビラビラしている状態。

破れてしまった「生命樹」
踊る人の腕部分が縦に破れている

 これは一体どうすれば良いか。「布は元々、永久には持たない」とあきらめるにしても、破れたままにしておくのも気持ちが悪い。

 アンティークのバティックで、時々、破れた部分を繕って売られている物がある。チレボンのアリリ工房のアリさんに相談してみた。

 アリさんによると、バティックを繕うのは「jelumat」(またはインドネシア語で「tisik」)と言い、特殊技術だと言う。念のため、通常の縫製職人さんに聞いてみてもらったが、「できない」との返答だった。

 アリさんが、バティック繕いのできる職人さんを探し、修繕を頼んでくれた。アリさんの住んでいる村(地区)にはおらず、別の村に一人だけいた、とのこと。

 「なぜそんなに難しいのか? 要は、かがるだけだろう。布として裂けていたらかわいそうだから、傷跡がふさがっていればOK」ぐらいに思っていたのだが、アリさんから送られて来た出来上がりを見て驚愕した。これはすごい。修繕したことがほとんどわからない。遠目には、まったくわからない。

 生命樹の方は、クリーム地なので、白糸でかがったら目立ってしまって嫌だな、と思っていた。「クリーム色の糸を使ってね」と頼んでおいたのだが、そんなことは釈迦に説法、頼むまでもなかった。同じような糸どころか、まったく同じ色の糸を使っている。そして、その糸が驚くほど細い。その細い細い糸で、裂けた部分を丁寧にかがって埋め尽くしている。きっちりと裂け目が繋がって布になっているので、これなら洗ったりしても大丈夫だろう。

修繕後の生命樹
修繕後の生命樹
修繕された「生命樹」

 「ガムラン隊」の方は、裂けた腕の部分の布を丁寧に元の場所にはめ直し、周りをきっちりとかがっている。白い背景部分、えんじ色の腕の部分、その両方にかかる部分、と、それぞれで糸の色を変え、ぴったりと見事に溶け込ませている。

修繕された「踊る人」
修繕部分

 「これは確かに特殊技術だ」と感心した。私の予想していた、「かがる(できれば、目立たないように)」という次元をはるかに超えていた。

 昔から、「大事なバティックが破れてしまった」という事態はあったに違いないし、破れたからといって捨てるわけもない。修繕は必要で、その技術が求められ、ここまで発達したのだろう。

 これも「バティック業界」を支える重要な技術で、この技術を持っているのは重要な職人さんだ、ということを、身をもって体験させてもらった。職人さんの数が少なくなっているようなのは残念だ。

 もし、大事なバティックが破れてしまったら、修繕を是非。

修繕費 1枚5万ルピア(2023年5月現在)
 

バティックを使うカテゴリの最新記事