うちのねこの中でウミの子供だけ、誕生日がわかる。2021年9月8日だ。
その日の午前6時ごろ、まだ寝ていたミニさんをウミが呼びに来た。ミニさんの腿の上に乗って、激しく鳴く。朝の魚が欲しいのかと思ったら、違うようで、ベッドから動かない。そして、濡れている。お産か、と、準備してあったねこ部屋へ連れて行った。
30分ほど待ってみたが、ウミはうなっているだけで、一向に生まれない。ミニさんは水を飲もうと、ねこ部屋を出て、台所へ歩いて行った。するとウミも付いて来て、台所で最初の1匹目が生まれた。急いでねこ部屋へ連れて行ったら、そこでまた、続けて2匹が生まれた。それからずっとウミは3匹の子ねこをなめていて、もう毛も乾いてきた。ビデオコールでそう報告するミニさんの目には涙。
甚五郎みたいな子ばかりが生まれてくるかと思ったら、面白いことに、3匹全部、模様が違う。1匹目は、黒いチョッキを着たみたいな白黒。便宜的に「シマシマ」(Garis-garis)と呼ばれることになった。2匹目は甚五郎みたいな子で、尻尾も細くて甚五郎そっくりだ。これは「甚五郎ベイビー」(Jingoro Baby)。そして3匹目はフレディみたいな黒い子。尻尾もフレディに似て、短い。仮に「フレディ・ベイビー」(Freddie Baby)と呼ぶ。3匹が「キュー」といった声で鳴いて、ぎこちなく動き回っている。もうすでにかわいい。かわいくてたまらない。この筆舌に尽くしがたいかわいさの3匹の子ねこについては、また別項で。
私はこの時ちょうど、日本に帰国中で、実家に滞在していた。この出産騒動のけがの功名としては、「ウミがお母さんになる」ことがショックで、ずっとコロナのことを考え続けていた母が、一時、「コロナを忘れた」そう。さらに、出産時の状況を聞いて、「お産で人を呼びに来るなんて、聞いたことない」と言葉をなくしていた。
初産と思われるウミが、もし外で出産していたら、無事に出産できたかどうか。その後も無事に子育てできたかどうか。母子共にラッキーだった、そして、安全な出産・子育て場所を確保したウミが賢かった、ということだろう。
逆算して考えると、ウミが妊娠したのは7月8日ごろだ。ウミと初めて出会った5月、その場で保護していたら、ウミは妊娠することはなかった。そしてまた、私の保護したのが7月31日ではなくて、もう少し早かったら、もしかして手術してしまったかもしれない。なので、この3匹の子は、生まれてこなかった確率の非常に高い、奇跡的に生まれてきた命。
猫は……光る、いのちのかたまりって感じです
高橋和枝(「うちのねこ」より)
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