ウミが出発する日の朝。私は会社へ行き、ミニさんは、鳴き続けているウミを静かにさせるため、紐を付けて、下へ散歩に連れて行った。最初のうちは紐を嫌がっていたウミも、だんだん慣れてきて、散歩を楽しむようになっていた。会社に着いてから、その動画が送られて来た。
散歩紐を付けたウミが、紐を引っ張って、ぐんぐん歩いている。草のにおいをかぐ。枝に鳥がとまっている木を見上げ、枝から飛び立った鳥を目で追う。木に登ろうとして、ミニさんに止められる。気持ちの良い場所を見付けて、座り込む。「さ、帰ろう」と言われても、動こうとしない。
ウミは自由と外を愛するねこ。自然がいっぱいのミニさんの実家へ行った方が、絶対に楽しい。そこの方が幸せに暮らせるはずだ。外を散歩するウミの動画を見て、改めてそう思った。
夜、ウミはミニさんに連れられ、夜行バスで出発した。切符は座席2つ分を購入してもらい、ミニさんの隣の席にウミのケージを置く。鳴き声が心配だったが、チュールとブラシングで黙らせる作戦。実際、それほど大きな声ではないが、ケージの中で鳴き続け、ケージから出して膝に乗せてなだめると鳴きやむ、ケージに戻すとまた鳴き始める、という繰り返しだったそう。ミニさんは一晩中、眠れなかったと言う。
バスは午後6時ごろにジャカルタを出発し、サービスエリアでの休憩を入れながら、中部ジャワへ向かった。バスを降りてからは20分ほど、オジェックに乗る。そして、午前3時半ごろ、ようやくミニさんの実家に到着した。
最初に送られて来たウミの写真は、長旅で疲れたのか、ミニさんの服の上に顔を埋めて寝ているところ。それから、だんだん新しい家や先住ねこたちに慣れていっている姿の写真や動画が送られて来た。びっくりしたのは、家の梁に上っている! ウミは高い所が好きだったが、こんな高い所にも上れるのか。
外には木が生えている。ウミが高い木に登っている! バナナの木、ナンカの木、マンゴーの木。敏捷で、見事な足取りだ。紐なしで外を自由に歩き回っているウミの姿を見て、良かったなぁ、と思う。
先住ねこたちの中で、特に面倒見のいいブラッキーと仲良くなり、ブラッキーがいつもそばに付いてくれているようだ。ミニさんから次々に報告が来る。
「ずっと外にいるのが好き。木や屋根の上に上っている。飽きたら下りてくる」
「庭でブラッキーと遊んでいる。お腹が空いたのか、下りてきた。ごはんを食べてから、またブラッキーと一緒に遊んでいる」
「ウミとブラッキーが一緒に寝てる」
これから、ウミの大好きなミニさんがいなくなったらどうか、ミニさんの家族になつくかどうか、ひとりで自由に外出するのはいいが、遠くに行きすぎて道に迷わないか、など、いろいろ心配はあるものの、ウミにはこちらの環境の方がいいだろう。
年内に、ジャカルタのねこ友達と一緒に、ミニさんの田舎を訪ねよう、ウミに会いに行こう、という計画を立てている。
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