[ウミ物語](7)ウミと海を見に

[ウミ物語](7)ウミと海を見に

 クリスマスの大型連休が始まる土曜の深夜0時、「ウミ(ウミ+海)ツアー」に出発した。目的地は、中部ジャワのミニさんの郷里、すなわち、ウミの新しい家。その後、近くのビーチ・リゾートに一泊する予定だ。

 よく当たる石井ゆかりさんの星占いを見ると、この日は「送り出したはずのものがまた戻ってきて、よく見たら『もう少し手を入れよう』みたいな展開になるかも」。げ!! これには一緒に行く友達も大ウケで「はなこさん、ケージ用意して行きますか?」「万一、ウミちゃんが土下座して『ジャカルタに戻りたい』って言ったら、連れて帰ってもいいね」と言われる。

 ウミがミニさんの郷里へ行ってからの様子は、ミニさんからずっと聞いていた。行ってしばらくの間は、いろいろやらかすウミらしく、「ウミ騒動」が続いていた。外を謳歌するはいいが、調子に乗って、遊びに行ったまま2日間帰って来ず、ひどく心配をかけた。ミニさんの家族が探し回って、ミニさんの正面の家で、庭に隠れているところを発見された。ほかのねこたちが怖くて、家に戻れなかったようだ。

 その後はしばらく家に閉じ込められ、朝夕に散歩紐を付けて散歩していた。黒いベルトのような物で体を覆っているので、近所の人に「警察犬みたいだ」と笑われていたそう。そのうち、紐を付けると走って行ってしまわないため、一人で紐付きのままで散歩するようになった。紐をずるずる引きずって歩き回るウミ。その紐を別のねこのモチが追いかけて、じゃれたり、押さえたりする。まるで、ねこがねこを散歩させているような面白い光景になった。そして、ウミは新しい環境に適応を始めた。

ねこがねこを散歩
ねこがねこを散歩させる

もう家を覚えて、自分で帰れるようになったよ

 私のアパートでは至る所におしっこをしていたのだが、「おしっこは、ちゃんとトイレでしている」。こんなに土や砂がたくさんある場所なのに、さすが、家ねこだ。

 ほかのねこたちともなじみ始めた。受け入れてくれるかミニさんが一番心配していた、サッシーというオスねこと仲良くなる。ブラッキーともよくツルんでいる。そして、雨期が来た。

ウミはブラッキーと、外で降っている雨を見ている

 ジャカルタではアパートの高層階で、おまけに窓ガラス越しだったので、地面に降る雨を直接見るのが、面白くて、楽しいようだ。

 写真や動画はたくさん見せてもらっていたし、ウミは問題なく田舎暮らしを満喫しているようだったが、やはり、この目で確かめたい。写真や動画といった断片ではなく、全体像を見たい。「ジャカルタねこ会」の友人たちが一緒に行ってくれることになり、「ウミ・ツアー」が実現した。

 ジャカルタから車で、道が空いていれば、約7時間。道が混まない時間帯を狙って、深夜の出発にしたが、それでも連休初日とあって、かなりの交通量だ。車窓にまぶしい、ジャカルタの街の灯りがいつかなくなり、ジグザグの山道を延々と走るうちに、朝が来た。それでも、目的地まであと2時間もある。この遠い道のりをウミは来たのか。

ミニさんの家の近所

 そして、ようやくたどり着いた、ミニさんの実家。家の裏にはバナナやヤシの木が生え、家の前にはナンカの木、家の横には大きなマンゴーの木。どれも「ウミが登った」と聞き、写真を見ていた木だ。家の前に寝そべっているのは、ブラッキーとモチ。家に入ると、子ねこがたくさん! 生後1カ月半の子ねこが6匹もいて、「かわいい」しか言葉が出て来ない。

 しかし、ウミはいない。やがて、外にいるのを探して連れて来られた。赤いリボンの首輪を付けていて、以前の通り、すらっとした体型だ。だが、もちろん「感動の再会」も、「あ、来たの?」さえもなく、チュールを食べたら、さっさと出て行った。想像していた通りの塩対応だ。 

 家の周りを散歩しがてら、ウミを探した。道の先には、ウミが到達したという田んぼが広がっている。人間にとってはそれほどの距離ではないが、ねこにとっては大冒険か。突然、何もなく開けているので、ここに来たら、びっくりするだろう。

田んぼ
家の少し先にある田んぼ
近所のねこ
近所のねこ

 のんびりした田舎で、時々、バイクが通るぐらい。交通量が少なくて安心した。そして、ウミは近所の家にも入り浸っており、近所の人たちにもよく知られているようだ。ミニさんのねこだが、半分、地域ねこのようになっている。

 ウミがよく遊びに行っているという家で、ミニさんが「ねこ、来てない?」と聞く。ミニさんの正面の家で、木戸の下をのぞいて、「あっ、いた!」。白い物が見える。木戸を開けると、井戸があり、その奥にトイレがある。井戸の横で、サッシーとウミが仲良く寝そべっていた。外の暑さを避けていたのだろうか。

昼寝をするサッシーとウミ
昼寝をするサッシー(手前)とウミ

 ジャカルタから持って来た蒸し魚を皿に入れてあげると、夢中で食べた。あまりの夢中さに、皿をどんどん押すので、皿が前へ前へと来てしまう。「満足するまで食べさせよう」と、ミニさんがお代わりを取って来た。2皿目も、あっという間に空になる。

 魚を食べてから、ウミはようやく、木戸の外へ出て来た。われわれを先導するようにして、ジャカルタから来た車を停めてあったモスクへと進み、そこの土の庭で、見せつけるように「ごろん」と転がり、体を土にこすりつける。白い毛が茶色に汚れた。これはジャカルタではできなかったことなのだ。ウミは土が大好き。ウミらしいアピール。それから、「ここのことは、よくわかっている」というしっかりした足取りで、モスクの方へと歩いて行った。

体を土にこすり付ける
体を土にこすりつける
白い毛が茶色になった
われわれが来る前にミニさんが洗っておいた、という毛皮が茶色に汚れる

 ミニさんの家を出て、ビーチへ向かう。水平線から波打ち際まで、海の上には、赤い太陽の道が続いていた。

パガンダランの海と夕日
夕日のサンセット・リバー

Special thanks to たまさん、たまさん夫、みきさん、ニコさん

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