修繕が終わった! 続・破れた布[100枚のバティック(38)]

修繕が終わった! 続・破れた布[100枚のバティック(38)]

 賀集由美子さんの未完成の失敗作、「破れた大きい布」の修繕と端縫いが終わった。チレボンへ行った友人がわざわざアリリ工房に立ち寄り、出来上がったばかりの布を受け取り、インドラマユ・バティック・ツアー中だった私の所まで届けてくださった。最速かつ安全に、「手から手へ」、届けられた布。

 ジャカルタへ戻ってから、ドキドキとわくわくの混じった気持ちで開いてみると、修繕(jelumat)はさすがに、見事な仕事ぶりだ。破れた箇所は細かくかがられていて、どこが直されているのか遠目にはまったくわからない。中央下にあった大きい破れのほかに、私の気付いていなかった端の小さな破れも見付けて(アリちゃんだろうか?)、修繕してくれていた。布の端は丁寧にミシンがけしてある。きちんと直された布を見ると、思わず涙が出そうになった。失われていたものが生き返ったような喜び、と言おうか。

修繕した箇所。中央上のザクロから下の花まで
修繕した箇所。中央上のザクロから下の花まで
端は丁寧にミシンがけ。ここにも小さな破れがあって、修繕してくれた
端は丁寧にミシンがけ。ここにも小さな破れがあって(右の葉の2カ所など)、修繕してくれていた

 大きさを計ってみると、157 x 218cm。これだけ大きい布の蝋伏せはさぞ大変だったことだろう。蝋落としをして、布が破れていたのを見付けた時には「あーー」と思わず声が出たのではないか。賀集さんの開いた口、苦い顔が目に浮かぶ。どれだけがっかりしたことだろう。しかしもちろん、捨てられない。きちんとたたんでしまわれていた。

 廊下の壁に、縦にして飾ってみたら、大きさはぴったりだ。白場が多いので、大きくてもあまり圧迫感がない。チレボンのご遺族の家のプラスチックケースにただしまわれているよりは、こうして飾られている方がいいだろう。賀集さんは苦笑しながら「はなこさん、これ、まだ出来てないよー……」と言うかもしれないが。

壁一面の布
壁一面の布
クパラ部分。白場は何色になる予定だったのか
クパラ部分。白く抜かれた場所は何色になる予定だったのか

 言葉にすると本当にベタになってしまうのだが、この布を見ていると、励まされている気持ちになる。「失敗しても未完成でもいいよ」といった消極的な肯定ではなくて、「失敗も未完成も美しい」という肯定。この大きな布に挑戦した賀集さんは素晴らしいと思うし、自分も何か「大きな布」に挑戦していきたいと思わされる。ただ、白く抜かれた模様を見ると、賀集さんのイメージしていた色を知りたかった、完成してほしかった、という寂しさも拭えない。いろいろな思いを抱きつつ、これから毎日、この布を見るだろう。大事なことは、賀集さんの存在がここに確かに感じられて、対話ができる、ということだ。

廊下の壁に飾った大きい布

「孔雀と柘榴」(未完成)
賀集由美子(スタジオ・パチェ)作

157cm x 218cm
制作年不明

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