[フレディ物語](2)フレディ・ザ・キャット

[フレディ物語](2)フレディ・ザ・キャット

 水曜のコロッケパーティーまでの間に、プトリから2本の動画が来た。最初の動画はわずか4秒。拾われた日に撮られた物で、これが動いている子ねこを見た最初だった。段ボール箱の中から庭の様子をうかがっている黒い子ねこ。「ハロー、チュッチュッチュッ(舌を鳴らす音)」というプトリの声に、振り向く。初めての環境に、ちょっとおどおどしているように見える。

 2本目の動画は、その3日後で、長さ9秒。家の中で、プトリが紙を丸めて作ってあげたボールで元気に遊んでいる。最後は、ボールの転げた方向とは違う方向へ走って行ってしまう、というオチ。

 元気な様子にほっとしつつ、ねこを飼ったことのない私がこんなに小さいねこをちゃんと飼えるだろうか、という不安も感じた。まずは、名前だ。フィリピン・マニラでハムスターを飼った経験上、名前は重要だと信じている。

 子供の時からねこを飼っていた日本の友達のKに電話すると、お昼のうどんを食べていた。名前を相談すると、「こういうのは、ひねったらあかん」と言う。うどんを食べながら、「黒ねこなら、クロ」「足袋を履いてるみたいなんでしょ? じゃあ、タビ」「『旅』のインドネシア語は? ジャランジャラン? ジャランは?」。あまりにもセンスがない。

 私はその当時、「ボヘミアン・ラプソディー」というクイーンの映画にはまっていた。映画館で9回見た。フレディ・マーキュリーも、ねこ好きだった。フレディ・マーキュリーにあやかって、フレディの飼っていたねこの名前はどうか? プトリも同じ発想だったようで、子ねこの名前の話になった時に「フレディの飼っていたねこの名前はなんだ?」と聞いてきた。Kにもそのことを話し、「だけど、ぱっとしないんだよね。『デライラ』とか。言いにくい」と言ったら、「じゃあ、フレディ」とあっさり。あーそうか、その手があったか。

K「でも、男の子なん? 女の子なん?」
私「わからん。まぁ、フレディはゲイだし、いいか……」

 私がさらに、「フレディはエイズで死んだし、その名前で大丈夫かなぁ」と、ぶつぶつ言っていたら、「ねこだから(大丈夫)」。そして、「かわいがってあげたらフレディ喜ぶよ」と、励ましの言葉をくれた。ついでに「持参金ないの? 去勢代はプトリ持ちだな」とか言っていた。

 プトリに「名前、フレディはどう?」と言ってみると「私も同じことを考えていた」と意見が一致。しかし、女の子なんだ、と言う。

But Freddie is no gender name
Freddie the Cat
Freddie Mercury

でも、フレディって性別のない名前だよね
フレディ・ザ・キャット
フレディ・マーキュリー

 プトリも賛成してくれたので、これで名前は決まった。

 後でプトリから、フレディを拾った時の状況を聞いた。

 プトリの誕生日の2月15日。雨の夜、子ねこの鳴き声がずっと外でしていたと言う。塀の外で鳴いているのかな、と思っていた。しかし、翌朝になって雨が激しくなり、子ねこの鳴き声はさらに大きくなってくる。「もしかして、うちにいるのか?」と、庭に出て探してみたら、ランブータンの木の下にいる子ねこを見付けたのだと言う。雨に濡れて、ひとりだった。この地域には野良犬も結構いるので「外は危険」と考え、すぐに保護。プトリの家でも犬を飼っているので、ねこは飼えない。「はなこさんのことがすぐに思い浮かんで、一番に連絡したんだよ」。

 プトリはそれまでに、家の周りで、フレディのような黒白ねこを見かけたことがないと言う。「それらしい親ねこも見たことがない。フレディは突然、現れた。だから、フレディは天から来たんだよ!」。Freddie came from the heaven。確かに。(つづく

フレディとプトリ(プトリ提供)
フレディとプトリ(プトリ提供)

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