水曜はコロッケパーティーの日。約束の午後4時を目指して、コロッケが揚がり始める。そのころ、ケージに入れられたフレディはプトリの車に乗って、5日間過ごした家を出発した。ケージの中で、大きいごはん皿を抱えるようにして、懸命にごはんを食べている後ろ姿の写真が送られて来た。ごはんで誘導してケージに入れたのだろう。
車での小旅行を怖がらないか心配だったが、車中ではほとんど、うとうと寝ていたと言う。そして午後5時ごろ、「ハロー、はなこさん」。プトリと共に、フレディが到着した。
玄関でケージから出されたフレディは、眠そうにあくびなどしていたが、初めての環境にまったく臆する様子はなく、まずは玄関に置いてあった靴の紐で遊び始めた。それから、垂れ下がっていたリュックの紐で遊ぶ。鏡をのぞいてびっくりして後ずさりするので、私とプトリで大笑いした。物怖じせずに家の点検を始め、テーブルクロスの房やボール、紐など、遊べそうな物には何でも手を出して遊ぶ。
プトリはうちに来る前にペットショップへ寄って、トイレと砂を買って来てくれた。プトリの家にはトイレがなく、フレディはいろんな場所で大小をし、プトリが掃除して回っていたそうだ。おまけにフレディは下痢をしていた。「はなこさんの所はアパートだから。あちこち汚さないか、それだけがすごく心配で」とプトリ。
トイレを設置して砂を入れ、フレディをその上に置くと、そのまま「じゃーー」とおしっこをした。思わずプトリと顔を見合わせ、「Pintar!」「賢い!」と声を揃えた。その後は砂をかきかきしている。フレディにとっては初めての砂なので、時々、遊びも混じるが、一生懸命に砂かけをしている。この、しつけするまでもない「ねこのトイレを使う賢さ」には、ねこを飼うたびに感心させられる。
コロッケパーティーの間、フレディは家の中でのびのびと遊んでいた。プトリの足に噛み付いて「イタタタタ」と言わせ、私の膝に乗っておやつをもらい、ねこを飼っている日本人の友達夫婦が遊びに来て「かわいいね、ファニーフェイスだ」と言われ、プトリの友達にお尻を拭いてもらい。想像以上のかわいさにやられながらも、私は不安だった。
それは、この賑やかなパーティーが終わった後のこと。やがて皆が「じゃあねー」と帰って行った。フレディをレスキューして5日間世話したプトリ、ねこを飼っている友達も帰り、私一人がぽつんと取り残された。私はねこの世話の仕方やねこの喜ぶことなど、まったくわからない。慣れた人が皆いなくなってしまい、フレディは寂しがるのではないか。
床に寝転がるとフレディが近付いて来て、グルグル喉を鳴らしながら、私の顔をペロペロなめた。あまりにも人間的な私の心配を払拭するように、何も意に介することなく。さらに、私の手の上に全身をもたせかけ、指をチュウチュウ吸って、自分の小さな手でふみふみする。思わず涙が出そうになり、「うちの子になってくれてありがとう」と、黒くて小さい体に語りかけた。
私のベッドは高くて上がれないし、夜、ひとりにしておくのも不安だったので、リビングの床に客用マットレスを敷いて寝ることにした。フレディも近くに来て、動く足にとびかかったりして遊んでいたが、電気を消して「寝るよー」と言うと、私の横に丸まって位置取りをし、おとなしくなった。時々くしゃみをするので、「寒いかな」とエアコンを消したりつけたりしながら、寝た。
フレディは静かに寝ていたのだが、午前3時半ごろに急に起きて、元気に遊び始めた。どかっと体の上に跳び乗って来たりする。すっかり目が覚めてしまい、未明のアザーンを聞きながら二度寝した。
フレディが来た日。好きでよく見ている石井ゆかりさんのツイッター星占いは「胸の中で長いこと温めていた、かなり大きな目標を達成できるような日」だった。(つづく)