【フレディ物語】(1)子ねこがやって来る

【フレディ物語】(1)子ねこがやって来る

 始まりは、2月のある土曜日。インドネシア人の親友のプトリから、WA(ホワッツアップ)がポン、ポン、ポン、と来た。

Hanako san
Mau kucing kecil?
Untuk di apartemen?
はなこさん
子ねこいる?
アパートで飼うのに

 「は?」
 なんとも返事ができないでいると、畳みかけるように、

Di rumah saya ada kucing kehujanan
Di halaman di dekat pohon rambutan
Kasihaan
Mau yaa Hanako san 🙂
私の家に、雨に遭った子ねこがいて
庭で、ランブータンの木の近くに
かわいそうー
はなこさん、もらうよね 🙂

 ようやく思い付いて「Tidak ada ibunya?」(お母さんいないの?)と返信してみると、「Tidak adaa」(いないー)と即答。「来週水曜のコロッケパーティーの時に連れて行ってもいい?」と言うのに、思わず「oh…okey(いいよ)」と返してしまった。

 ついに来たか、うちにねこちゃんが?! ジェットコースターのようで、ちょっとぽかんとしてしまった。

 実は、それまでに長い長い道のりがあった。雑誌でジャカルタのねこ特集をした時に、「ねこは拾うもの」と知った。ジャカルタで取材した人たちは、いろんな出会いがあって、かわいそうなねこをやむを得ず保護した人が多かった。中には、「玄関のベルをピンポンされて出てみたら、ねこが置き去りにされていて、『ニャー』と鳴きながら中へ入って来てしまった」といういきさつで飼い始めた人もいて、「そんな出会いはないものか」と待望していた。

 かわいそうなねこが現れてどうしても飼わざるを得なくなる、といった出会いはないままに、ジャカルタのペットショップへ見に行ったことも何度かある。ある時などは、午前中に見た子が忘れられず、一日考えた末に「飼う!」と決めて、その日の夕方にペットショップへ舞い戻ってみたものの、すでに「売約済み」。外国人が子供のクリスマスプレゼントに買ったのだと言う。あきらめ切れずに交渉したが、さすがに売ってはくれなかった。それを母に話したら「その人に買われた方が、ねこは幸せ。はなちゃんは忙しすぎてほとんど家にいないから、ねこがかわいそう。ハムスターぐらいにしとき」と言われ、相当落ち込んだ。

 パサールツアーを主宰していた時、パサール(市場)で子ねこを拾ってしまった参加者がいた。「家に連れて帰るけど、どうしても飼えない場合は相談してもいいですか」と言われ、主宰者という行きがかり上、「その時は私が飼うか」と覚悟を決めた。「もしかして、うちの子になるかも」という思いで眺めていた子だったが、拾われた家で無事に飼われることになり、とてもかわいがられていたのだが、残念ながら、すぐに亡くなってしまった(この「グラちゃん」の話は、またいつか)。

 プトリから話があった3カ月ほど前には、日本人の友達が「はなこさんのために」と言ってゴルフ場で生まれた子ねこを拾って来た。しかし、その時は、日本への長めの帰国を間近に控えていた上、ジャカルタでの大きな仕事がちょうど終わったところで、今後もインドネシアにいるかどうかはわからない、という状況だった。そんな先の見えない状況でねこを飼い始める気にはどうしてもなれなかった。それでも一応、見に行ったものの、小さな体の全身の毛を逆立てて威嚇され、好かれてはいない、ということはわかった。拾われた家で楽しそうにしているねこが、私が引き取ることで幸せになれるとはどうやっても思えず、引き取ることはできなかった。

 それから短期間しか経っていなかったのだが、状況は大きく変わっていた。日本から戻って来て、プトリから連絡をもらう2日ほど前に「もう少しインドネシアにいるかも……」という出来事があったのだ。まさにそういうタイミングだったので、「まぁいいか」と気が緩んだというか、ついに我慢し切れなくなったというか。

 プトリとのやり取りでは、写真も見ずに「okey」と言った。どんな子でもいい、と思っていた。どんな毛色でも、かわいくても、かわいくなくても、飼うと決めた以上どんな子でもいい。プトリから送られて来た写真を見て、電気が走ったかのように胸がドキンとした。段ボール箱の中から黒い顔、キラキラした目がのぞいている。段ボール箱にかけた手の先は白い。「黒ねこちゃんだ! 手袋してる!」。

 その少し前に、サッカー場を黒い弾丸のように駆け回ってニュースになった黒ねこがいた。緑の芝の上で、黒い全身が宙に浮いている写真を見て、「黒ねこ、いいなぁ、黒ねこは格好いいなぁ。もし、ねこを飼えるなら、黒ねこがいいなぁ」と思っていた。その望みをかなえるかのような黒ねこだった。(つづく
 

拾われたばかりのフレディ
プトリ撮影

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