中部ジャワ・バティックに詳しい福田藍さんに、ソロ、ジョグジャカルタのバティックの話をうかがった。その時、「手持ちのバティックを持って来てください」とお願いした。そのうちの一枚が、なんとも大胆な柄。
「これは、現代文様ですか?」
「いや、これも伝統文様なんですよ。スマンカ(semangka)、スイカです」
スイカはインドネシア語で「スマンカ」と言う。これがスイカとは! 円や半円の内側に、同心円状に線が数本描かれ、その両側に小さな点が見える。線は、スイカの皮の黒い筋を表したものだろうか? それとも、実を輪切りにした様子だろうか? 点々は、たくさんの種?
あまりにも斬新な意匠化を遂げていて、これが「伝統文様」ということにびっくりする。「現代作家の作った北欧デザインです」と言われても納得してしまいそうだ。
珍しいスイカ柄ということと、文様自体が「面白い」と気になっており、ジョグジャカルタのギリロヨ村で、草木染めの一枚を購入した。この時、バティックの作り手の一人であるエルニーさんに「なぜスイカ? どんな意味?」と聞くと、「豊穣のしるし」との答え。スイカはたくさん実るし、種もたくさんあるからだろうか。
日本の友人たちに写真を見せると「この渦巻き、アンモナイトかと思った」「豊穣、ですか。米の稲穂、と言われた方が、われら日本人にはしっくりきますね(笑)」という反応。そう言われると、五円玉にもある「頭を垂れる稲穂」のようにも見えてきてしまう。
福田さんのスイカ柄バティックは、背景が茶色で「土っぽい」色合い。私の買った草木染めは、全体的に、緑色だ。緑の草の中にツルや花が生い茂り、丸いスイカがごろごろ転がっているように見える。まん丸ではない不思議な円形なのは、草に埋もれていて全体が見えない、という表現なのだろうか。スイカの丸が何とも面白いアクセントになっている、スイカ畑を見ているようなバティックだ。
「スイカ」(Semangka)
ジョグジャカルタ・ギリロヨ村作
104cm x 247cm
2023年10月購入
120万ルピア(値段は購入当時)
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